第6話
魔物の厩舎に店内の魔物を戻す。一時的に別の檻に魔物を移し、檻の中の糞尿を綺麗に掃除する。そして魔物が過ごしやすいように、種別毎に異なる檻のセッテイングをマーシャルさんに教わる。
例えば、白角兎なら小さな穴に見立てた木の箱を用意して、その中に藁でベッドを作ってあげたり、黒夜蝙蝠ならぶら下がる木の棒を用意したりと。
勿論、餌も種別によって異なる。緑吊し上げ花には僅かな水を、銀雨猫には魚の骨をあげる。
作業が全部終わると、お風呂に入るようにマーシャルから言われた。
「お、お風呂!? まさかお屋敷にあるの!?」
「そうさ。仕事が終わったらお風呂に必ず入ること。何度も言うが、 魔物は綺麗好きでデリケートな生き物なんだよ。その世話をするノアが不潔じゃ、話しにならないよ。お風呂の使い方はタムリンが教えてくれるさ」
タムリンに連れられ浴室に来た。バスタブにはお湯が入って無かったが、タムリンが白い魔法の杖をバスタブに向けると、杖の先から大量のお湯が吹き出し直ぐにバスタブをお湯で満たした。
「おぉぉっ!? マジ魔法凄い!!」
ポカリと杖でタムリンに頭を叩かれる。振り返るとタムリンは唇を指差す。
なんだろう? 煩かったのかな? あっ…。
「言葉遣い?」と聞くと、コクリと頷く。
タムリンは石鹸とタオル、バスタブを指差し、バイバイと手を振って浴室を出て行く。
ノアは衣服を脱ぎバスタブに入る。思ったよりもお湯の温度が高かったけど、慣れれば気持ちが良かった。バスタブの中で体を綺麗に洗うが、最後はどうするんだと疑問に思う。石鹸の泡を流す水もお湯がないのだ。
ドアをノックされ、「はい?」と返事をした途端にタムリンが入って来た!?
恥ずかしさのあまり湯船に深く潜る。
タムリンはオイデオイデをするが、出られるわけ無いでしょ!? まぁ、お昼に裸見られたけど…。タムリンはバスタブに近づいてきて、ノアの肩の泡を指差す。
「あ、泡を流してくれるの?」
ウンウンと頷き、ノアの腕を引っ張り上げようとするタムリン。大切な部分を隠しながらバスタブを出ると、白い魔法の杖でお湯を出し、全身に付いた泡を洗い流してくれた。
◆◇◇◇◇
夜中に目覚めると自宅の部屋じゃないので驚くが、住み込みで働き始めたんだと冷静になる。夢にまで見た一人で寝るベッドなんだけど、いつも一緒に寝ていた寝相の悪い弟に夜中に蹴っ飛ばされていたのを懐かしく感じる。
「喉が渇いていたな」一階に下りるとマーシャルさんが起きていた。
「どうしたんだい? 早くもホームシックかい?」
「ち、違う…ます。喉が乾いて…」
「そりゃそうだろ。初日で相当疲れていたんだろうね。夕食を食べながら寝てしまったんだから」
「へっ?」
「タムリンに部屋まで運んでもらったんだよ。明日お礼を言っておきな」