第51話
厩舎で仕事中のノアと見学するリオニー。
「タムリン様を巻き込んだこと。怒ってる?」
「きちんと、タムリンお姉ちゃんと話してないから、何とも言えない。だけど、巻き込んだのはリオニーじゃないでしょ?」
「私がセレスティーヌを助けに行かなければね」
「リオニーとヴェラー様の関係って?」
「一言で言うのは難しいな…。命の恩人でもあり、ノアとタムリン様のような姉妹に似た関係でもあり、世界で一番尊敬できる人かな?」
「複雑な理由がありそうだね…」
「で、ヴェラー様って、商業都市サナーセルに何をしに来たの? 専属の護衛じゃなかったんでしょ?」
「ごめん。それは言えない」
「そっか、でもリオニーが自分の所為だと言うならば、最初はノアが【索敵】スキルを使ったからだよ?」
「う〜ん…。それね。私はタムリン様と機密保持の契約により、ノアの事を漏らせないから教えてもらったけど、軽々しく人前で使って良いスキルじゃないわよ。タムリン様にも注意されていたでしょ? だけど…それでセレスティーヌを助けられたのだけれど…ね」
「あう…。またタムリンお姉ちゃんに怒られるのかな」
「それどころじゃないわよ。面倒くさそうな人物や組織が何となく、ノアの異常性に気付き始めているんだからね。もう人前では使わないこと!!」
◆◇◇◇◇
四人での初めての昼食。
「はぁっ!? ノアがプロポーズされたですって!?」
リオニーが叫び、タムリンお姉ちゃんが、ガバッと席を立つ。
「タムリン様。これは最優先で処理しなければならない事案です!! 即斬首です!! 私のいない間に!!」
「何を物騒なこと言っているんだい!!」
ポカ、ポカと、タムリンお姉ちゃんとリオニーの頭にマーシャルさんの拳骨が落ちる。
おぉっ!? マーシャルさん!? 異端審問官とか関係ないの!?
「前から聞きたかったんですが、マーシャルさんって何者なんですか? こんな大きなお屋敷に住んでいるし、タムリンお姉ちゃんを引き取ったとか、リオニーもマーシャルさんを特別扱いしてますし…」
リオニーとタムリンお姉ちゃんの視線が同時に明後日の方向へ向く。
「そうだね…。ノアにも話しておかないとね」
「うわっ!? マーシャルさんって、もしかして大物なんですか? き、緊張してきました」
「なら、また今度だね」
「そ、それは卑怯です!! 今夜眠れません!!」
◇◆◇◇◇
タムリンが帰ってきたから湯浴みも楽々なはずだったが…。
(何でリオニーと一緒なんですか!?)
(別々だと時間がかかる)
(恥ずかしいです!!)
(ノア。恥ずかしいのは私も一緒よ。だけどタムリン様のお時間を無駄にする訳にはいかないわ)
(あれれ? リオニーも【念話】スキル取ったの?)
(まぁね。色々便利だからね。それよりもノア。諦めて服を脱ぎなさい!!)
(それは…リオニーが女の子っぽい体つきだから言えるんだ!!)
(ノア!)
(ほら、タムリン様が怒ってしまったじゃない!?)
(わ、わかった。わかりました。脱ぎます…)
(ちょっ、リオニー、へんなところ触らないで!!)
(良いじゃない。女の子同士なんだから…)
(だ、駄目です!!)




