第38話
「帰りは魔物を探す必用がないから街道に出るぞ」と、戦士のボニファーツさんが街道を指差す。
来る時は、草原でも魔物を探していたの? 探しながらでも移動速度だったのか…。普段はもっと速いのかな!? 足の遅いノアは焦る。
銀溶液のペルペトゥアを胸に抱き「がんばろう!」と呟く。
「先頭はライナー、最後尾はレイン。俺とゲレオンが二人で平行に歩くから、その後ろを、ノアとヒノデリカ、タムリンとリオニーで」
帰りは隊列を組むらしい。そうか、街道でバラバラに歩いていても、馬車の邪魔だし、余計なトラブルを避けるためかな。
見た目はゆるやかな丘陵地帯だけど、足場は悪く、下りということもあり、何度も転びそうになる。
「ニヒヒ。ノアは運動音痴だな」小馬鹿にしながらも、手を繋いでくれたヒノデリカ。銀溶液のペルペトゥアは、繋いだ腕を渡りヒノデリカの頭に引っ付いている。可愛い。
「止まれ!」
先頭を歩くライナーが、今までに無い緊張した声で、隊列を停止させた。
「街道で馬車が襲われている」
この場所から街道まで400mくらい? 馬車にいる人の所属や名前までわかるのだ500m以内は確定だろう。
馬車の護衛6名に対して、襲撃する側は20名だ。個々の強さにもよるが絶望的だろう。
襲撃を受けた馬車の近くにいた…他の馬車は逃げるように離れていく。まるで襲撃する側が、誰を襲うか理解っていたような動きだった。
「街道に出るのは諦めて、このまま街の西門へ向かう。レイン! このまま一気に西門まで走る。ノア達に途中でライト・ヒールを頼む!!」
戦士のボニファーツが指示を出す。
「あ、あの…馬車は…助けないのですか?」
「ノア。現実は絵本の物語とは違う。ボニファーツさん達の優先度は私達の安全。それに…街の近くで襲う連中は、盗賊のような物取りではないの。現に金を持っていそうな商人を狙っていないわよね? それに怨恨やお家騒動などが多く、下手に手を出せば四六時中狙われることにもなりかねない。一刻を争う事態なのよ。あまり冒険者を困らせては行かないわ」
厳しい口調でリオニーから説教される。
「ご、ごめんなさい…」
「ノア、リオニー急いでくれ!!」
せめて…誰が狙われたか…【索敵】スキルで調べる。
「あの…リオニー。目撃者って…殺されないかな…」
「街の前で襲撃するぐらいだから、目撃者だからといって巻き込まれることはないわ」
「で、でも…。セレスティーヌ・ヴェラー様って…。領主様の…」
その名を聞いて、リオニーの表情が一変する。
「ノア!? あの馬車に…セレスティーヌがいるのっ!?」