第35話
今回、従属させる魔物は一匹のみ。
出現率の高い銀溶液か白角兎を無難に従属させるか。それかレアな灰針鼠を狙うか。
ノアの答えは銀溶液。銀溶液の特徴として、別の銀溶液を取り込んで、レベルアップできるという能力があるのだ。これならば戦闘をしないノアでも、銀溶液のレベルアップが可能になる。
「銀溶液の出す溶解液には注意しろ。俺の前に絶対に出るなよ!!」
戦士のボニファーツは、自身と銀溶液の間に盾で壁を作る。
その銀溶液は、ノアを飲み込んだバスタブほどのサイズではなく、コップ半分のサイズであった。
「小さい…可愛い…」とノアは呟く。
「銀溶液は、物理攻撃がほとんど効かない。ゲレオンの出番だ」
レインさんが、商業組を下がらせながら、ゲレオンさんに指示を出す。
「でもな…。そんな小さな銀溶液では…最弱の魔法でも消し飛んでしまうぞ」
(私に任せて…)
タムリンの指示を皆に伝える。
「タ、タムリンにアイデアがあるそうです! タムリンが生活魔法の着火を使うから、ヒノデリカの【炉熱】スキルで火力を銀溶液が死なない程度に上げで欲しいとのことです。ヒノデリカ…出来ますか?」
「なっ。何で…【炉熱】スキルの事を? いや、うん…出来るよ」
「鍛冶屋は、【炉熱】スキルが必須だからな」とボニファーツさんが答えた。
レインさんとボニファーツさんの許可が出た。
タムリンは着火の魔術を銀溶液放ち、一瞬見えた火をヒノデリカが【炉熱】スキルで制御しながら、ダメージを与えていく。
銀溶液が逃げないように、レインさんも盾を構える。
やがてサイズが更に小さくなった銀溶液に、いよいよ【従属】のスキルを発動出来ると、ノアがソワソワし始める。
「ま、まだですか!?」
「よし、ヒノデリカ、火を消してくれ。ノア、まだだぞ。銀溶液の動きが鈍るまで待て」
5分ぐらい様子を見て、銀溶液の体力が落ちているのを確認した後、ニヤッと笑いながらボニファーツさんは許可を出す。
「は、はいっ!! いきますよ!! 【従属】スキル!!」