第27話
日曜日の朝の礼拝が終わり、鍛冶屋の娘のヒノデリカと異端審問官の娘リオニーの三人で雑談するレオナ。話題の中心は、来月入学予定の学校についてだ。
「来月からは、日曜日の他に、火曜日と木曜日も会えるね!」
「ニヒヒ。それは嬉しいんだけどさ。勉強ってのがね…」
「私は家で学んだことばかりなので通学する意味がない。しかし…二人に会えるのは嬉しい」
「ノアも基礎中の基礎は大丈夫かな? でも知らないことも教えてもらえそうで楽しみ」
「はぁ? お前ら…読み書きに計算も出来るのかよ!? そうなんだよな…。鍛冶屋の娘も今や…お勉強する時代なんだよな…」
リオニーは、ヒノデリカの肩に手をポンと乗せた。
「いつでも勉強に付き合ってやるからな」
「ニヒヒ…。リオニーは…スパルタそうだからな…。ノアに頼みたい…」
「ノアも手伝いたいけど…。お仕事がね」
「ニヒヒ。違いねぇ。休みは月一だからな」
「ノアと同じだね!?」
「そりゃそうさ。商店の休みは街で指定されていて、うちの店はノアの店と同じ休日指定だからな」
「えっ!? そんな決まりがあるんだ…」
「ほう? 休日か…」
「休日と言えばね。今度、ノアは冒険者さんと一緒に、街の外に魔物を捕獲しに行くんだよ!?」
「ノア、使い魔は卸売市場から購入するものではないのか?」
「リオニーは詳しいね。お店で売っている魔物はそうだね。でも、捕獲する魔物は、なんと! ノア専用なの!!」
「ニヒヒ。何だか、楽しそうじゃねーか。一緒に行こうかな?」
「!? わ、私も!!」
一緒に行くためには、マーシャルさん、両親、冒険者のレインさん達の許可が必要だ。
「三人でで行きたいけど、無理だと言われたら、素直にそこでお終いにしましょう」とリオニーがまとめた。
◆◇◇◇◇
偶然、レインさんが、打ち合わせのため『ムーンレイク使い魔店』に着ていた。
「まぁ、常に街が視界に入る程度の距離を想定している。魔物の脅威はそれ程でもないが、人間…つまり盗賊たちへの注意は必用になる。しかし、街の周辺で襲撃するような馬鹿な盗賊もいまい」
冒険者のレインさんが了承すると、マーシャルさんが提案した。
「そうだね。ノア達のまとめ役として、タムリンを一緒に行かせよう」
「タムリン?」
「あぁ。ここの住み込みメイドだよ。元だけど…魔法都市ヴェラゼンで学園に通うほどの優秀な魔女さ」
「そ、それは凄い!?」
「ただ。タムリンは声が出せないのさ。今では…ノアとスキル経由で意思の疎通が出来るみたいだがね」
マーシャルさんは、ジト目でノアを見る。
うわっ!? バ、バレてる!?
「あとは、あの子らの両親の答え次第だね」
レインさんとタムリンの顔合わせも含めて、マーシャルさんがレインさんを夕食に招待した。夕食に現れたレインさんは、いつもの冒険者とひと目で理解る鎧姿から、街娘が着るようにカジュアルな格好だった。
「レインさん!? 凄く…綺麗です!!」
「ふふっ。ありがとう、ノア」
人間も魔物のように、不思議で知らないことが沢山あるんだな…。今この瞬間も、ヒノデリカやリオニーは、私が思いつかないような事をしているのかしら?




