第243話
最終回です。
あまりにも三人がタムリンになることに抵抗なく、いや自ら望んだようだったのが、何か裏切られた気になったからかも知れない。
「セレスも酷いぞ」
「お、俺は…世界を救いたかったんだ…」
ノアは、世界の叡智の杖を振り、セレスの力を殆ど奪い取ってしまった。この世界の理から外れた世界では、連れて来たホスト側がやりたい放題の世界なのだ。
「そこまで強い力は、もう必要ありませんから」
「おい、それを言うなら、ノア、お前は…」
「ノアは…そうですね…そのうち、この世界から去る予定ですから」
そして、ノアは決断しなけらばならない。マーシャルさんの言う通り、この結果を受け入れるかどうかを。
「セレスは…この結末をどう考えますか?」
「それを言うってことは、世界中に広がる魔物の氾濫をどうにかなるのか?」
「どうにかするために聞いているのです」
「どういうことだ?」
「世界中の魔物を倒すのは不可能です。ですが、『強くてニューゲーム』を別のスキル…例えば『魔物を統べる者』にすれば、世界中の魔物をコントロールできますし、消し去ることも可能です」
「それは…つまり、『強くてニューゲーム』で元の時間に戻せないと言うことか?」
「はい。スキルを変換するときには、この世界の叡智の杖を触媒にします。多分、壊れてしまうから…もう別のスキルに変換できません」
「だから…この世界で良いか聞いたのか…」
「はい。ノアには…この世界で良かったと胸を張って言い切る自身がありません」
「良かったと胸を張って言い切るか…ノア、それって普通の事だ。後悔のない過去がない者などいないんだ。先に進もう。ノア。誰にも文句は言わせないさ」
「ぐっ…セレスのくせに!!! カッコつけて!!」
ポカポカと頭を殴る。今のセレスなら、ノアの圧勝なのだ。
世界の叡智の杖を掲げて、叫ぶ「『スキル改変:生命を統べる者・改』!!」
「なぁ、 改ってなんだよ。しかも魔物限定じゃなくて…生命だと!?」
「うん? 付けてた方が格好いいでしょ?」
ノアはセレスと手を繋いで元の世界に転位する。元の世界で言うと、3時間後になってしまった。
「で、魔物をどうにか出来そうか?」
「任せて!! あっ、裸になるから、あっち向いてて」
ノアは昔一度だけ試した方法を採用した。
天に向けた左腕、七色に輝く精霊義手は、ノアの裸体を七色に染めていき…パリンッと、ガラスの割れた音が響き渡りノアの体は粉々になる。
微細な粒子となったノアは、キラキラと輝きながらも自然に吸収され、消えていく。そして、『生命を統べる者・改』を介して、人々の心に安らぎと癒やしを、魔物には撤収と封印を…。
この日、世界中の人々が知る。ノア・デモニウム・プリンセプスの名を――
◆◇◇◇◇
数年後。ノアは23歳になった。それ相応の容姿になるように自らの体を魔改造したのだが。
魔法都市ヴェラゼンに聳える十一塔に、新たな塔が追加されることが決定された。実に数百年ぶりの快挙である。
そもそも塔とは研究目的のために建てられ、十一塔は、神聖・精霊(4大精霊)・妖術・魔術・魔法・魔導・呪術・死霊というカテゴリに分けられている。
その新たな塔の主になる人物が、魔法都市ヴェラゼンの中心街にある学園での演説を終え、学園から中央広場まで続くメイン通りで、王国騎士団を先頭にパレードするオープン馬車に乗り、数百年ぶりの塔誕祭で沿道に溢れ返る人々に笑顔で手を振っていた。
よく見れば金髪にエメラルドの瞳の20台前半の女性で、振っている左腕は精霊義手であった。その女性の名は、ノア・デモニウム・プリンセプス。既存の魔物育成の枠にとらわれず、ある意味自由であり、神の領域を犯し命を弄ぶ外法な手段を用い、扱いやすい魔物を数多く生み生み出す。現代の魔王とも呼ばれている。
この物語は、ノアが塔の主に認められるまでの奇跡の物語である。
モチベーション下がりすぎてグダグタ感全開ですが、
どうにか終わらせました。
本当に、ここまで我慢強く読んで頂きありがとうございました。
次回作は…。
おい、中途半端な小説をどうにかしろ!! と言われそうですが、
「ガールズラブ中心予定」作品と、「孤独のPK、ほくそ笑む2」ですかね…。




