第241話
「おはよー。そろそろリリアナの体を返す気になってくれた?」
「愚か者。返したら我は…」
「大丈夫、ちゃんと考えてあるから」
「ほう…。だが、お主のこと、まだ信用したわけではないぞ」
「はいはい。で、今日はどうする?」
「うむ。そうだな…。また公園に行きたい」
「一緒にお弁当作る?」
「う、うむ…」
あれからどれぐらいの月日が経ったのだろうか? ノアはヴァルプルギスの夜会のリーダー達と一緒に暮らしていた。彼の求めるものは日常的なものばかりだ。朝起きて、一緒にご飯を作って、食べて、片付けて…。
人間より上位種であるから仕方ないのかも知れないが、タムリンやリーダーに言えることは、自分勝手というか人間の命を軽んじていることだ。
ノアの出した結論は、タムリンとリーダに仲直りしてもらい。この人間界で争わないこと。
「ノア、おはよー」元聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムも、リーダーの呪縛から解放され、ただの一般人として生活していた。ボタンを掛け違い片肩が出ただらしない格好だ。とても元聖女とは思えない。
「今日はね。公園に行くんだよ」
「ふぁぁぁぁぁ…。なら…お弁当作らないとね」
「うん、リーダーじゃない…タムリンも作りたいって」
「顔洗ってくる…」
三人でお弁当を作る。タムリンは、不意に「我は思う。このまま…ずっと三人で…」と言い出したので、「駄目だよ。ノアはノアで他にも沢山やることがあるの。タムリンの心の隙間を埋めるだけが、ノアの人生じゃないんだよ」って言ってやる。言うべきことは言わないと駄目なのだ。
「ふむ…。そうなのだが…」
確かにタムリン(リーダー)に出来ることはない。タムリン(ジュディッタ)とタムリン(リオニー)が、タムリン(リーダー)を許し受け入れるしか無いのだから。
お弁当を作り終えた三人は、お茶を飲んでしばし休憩する。そして、アンブロス王国の王都で、デザートを選びながら、北門を目指す。北門を出れば小さな丘があり、そこが目的地の公園だ。
公園に到着したノア達を待っていたのは、セレスティノ・ヘルメスベルガーに連れられたタムリン(ジュディッタ)とタムリン(リオニー)だった。
「ど、どういうことだよ、ノア…ノアは我を裏切ったのか!?」
「し、知らないよ…。聞いてないし、どういういことなのセレス!?」
「これはだな…。タムリン(ジュディッタ)とタムリン(リオニー)が…ノアに会いたいと…」
「畜生!! ノア!! 裏切りやがってぇぇぇ!!」
始まったか…。ノアが危惧いしていた事は、三人のタムリンを引き合わせるタイミングが間違っていれば…このような結末になることだ。
「我がただ黙って…日々を過ごしていたと思うなよ!!」
「それは…こちらとて同じこと!! リオニー! 結界を!!」
リオニーは、世界の叡智の杖を振りかざす。元から結界を詰め込んできたのであろう、瞬時に結界が展開される。
「ノアが王都を選んだ理由は…所謂人質作戦だろう? ここならば…王都の民へ被害もない」
セレスは私が敵対しようとも…戦いを始める気だ。
「何故そこまで…リーダーを恨むのだ!?」とノアは叫ぶ。




