第240話
息を引き取ろうとするマーシャルさんの口から、「もう…世界をやり直すのはお止め」と言われた。理由はノアにも理解っている。だけど…。
「世界は救われても…ノアが壊れていくだけだ」
「でも…こんな死に方は!!」
「良いんだよ。もう…。十分さ。約束しておくれ、どんな結末になっても…受け止めると…」
ノアは立ち上がると、ニヤニヤとリリアナの顔で笑っている。
「やはり…駄目だノア!! リリアナを殺して…リーダーも!!」
セレスの言っていることは正論だ。間違っていないことはノアにも理解る。
「だけど…。世界を守るために、リリアナを犠牲にするなら、自分たちの命も犠牲にする覚悟があるのですか?」
ノアは四大精霊のうち、不死鳥のエドゥアールと暴風霊のクローイを呼び出した。
「私が…あのとき、とどめを刺していたら…」リオニーは、世界の叡智の杖をぎゅっと握る。
「フフフフッ! 残念だったな。あのときはもうリリアナを奪っていた」リリアナは勝ち誇ったような顔でリオニーを見る。
「戦っても…答えにたどり着けないかも…」と言いながら、ノアはリーダーに近づく。そして、【転位】スキルを使って、リーダーと一緒に消え去った。
そして、残されたセレスティノ・ヘルメスベルガーとリオニーは敗北を悟った。
◆◇◇◇◇
ノアとリーダーは、 アンブロス王国の王都に転移していた。
「王都か。何を企んどるのか知らんが…」
「はい。ソフトクリーム。美味しいよ」
ソフトクリームを手に取ったリーダーは固まってしまった。
「いや、毒なんて入ってないし!!」
「なんと、これは食べ物であったか!!」
「えーっ!? 知らないの? こうやって食べるんだよ」
「ほう…」
ノアは知っていた。本当は寂しくて、ただかまって欲しいだけなのだと。どうにかリーダーの心を開かせて…。
「ノアよ。心を閉じているのは、我ではないぞ」
えっ!?
「タムリンたちだ。一度悪と決めつけた相手の話など聞かんのだ」
「でも、どうして襲ったりしたの?」
「許されぬ苦しみ。永遠に交わることがない…互いの想い。無いと理解っていても、そこにいれば、どうしても可能性を見出してしまうのは必然であろう?」
「うーん…。あのさ、タムリンじゃないと駄目なの? お互い相性が悪いんだから無理に関係を持たなくてもいいと思うんだけど」
「そうかも知れぬが…」
「タムリンの何に惹かれるの? 教えてよ」
「……わからぬ、な…。一体、我は何を求めて戦っていたのか…」




