第24話
黒い法衣に似たローブを身に纏うリオニーは「そのときが来ればわかる」とニッコリ笑う。
女の子にしては筋肉質だけど、健康的な小麦色の肌で水着のような衣装のヒノデリカも「お前ら変わってるな」とニヒヒと笑う。
「鍛冶屋に使い魔ですか。二人共探求の先に魔剣の製造や悪魔との契約などに手を出さないように。初めての友をこの手で…裁きたくはないので…」
「こ、怖いこと言わないでください!」
「ニヒヒ。魔剣か。いつか作ってみたいな」
「ヒノデリカ。その発言は聞かなかったことにしますが、正式な異端審問官の前で言わないように」
「わかってるって。異端審問官達は怖いからな〜」
うわっ。何か濃いなこの二人…。
「ほら、俺が作った。ペーパーナイフだ。今日出会う友達のために作ってきた。まー、人を殺められる武器の作成はまだ許可されてないんだけどな」
シンプルだけど使いやすそうなペーパーナイフだ。
「あ、ありがとう…。凄いね。もう作れるんだ…」
「ニヒヒ。こんなの簡単、簡単」
それに常時使用している【索敵】スキルに引っかかるのは、恐らくリオニーを護衛する複数の異端審問官の人たち? 突き刺さるような視線が痛い。不意にそっちの方に視線を向けてしまい…目が合ってしまった。き、気まずい…。
「さて、神父のラファーレ様がお待ちですよ。礼拝堂に向かいましょう」
異端審問官の娘ともなれば、神父様とも面識があるのですね。
◆◇◇◇◇
歌の演奏やらお祈り、神父様からのありがたい説教などを聞いた後、子供たちだけで礼拝の感想や説教について感じたことを話し合う。それらが終わると、子供たちの交流の時間が始まりました。
既にグループが出来上がっていたので、ノアも今朝知り合った鍛冶屋の娘のヒノデリカと異端審問官の娘リオニーの三人で雑談を始めました。
「えっ! リオニーってお貴族様…でしたか…あ、あの…ご、ご無礼を…」
「ノア、慌てないで。私はそういうのは求めていないから。今まで通りでお願い」
「ニヒヒ。リオニー、俺に礼儀作法とか求めても無駄だぞ」
「それでお願い。素のままの友達が欲しいの」
聞けば聞くほど二人の生活は自分とは全然違っていた。でも羨ましいとかは思わない。だって、魔物のいる生活が一番じゃない!?
話しているうちに三人に一人の共通の知人がいること知る。それはエフェルフィーレさんという若くしてBランクにまでのし上がった商業都市サナーセルでも有名な冒険者さんです。
ヒノデリカの店の古くからのお客さんであり、異端審問官では討伐不可能な魔物を使役する異端者を捕まえる時の護衛役だったり。
「ノア。それって凄いことよ。エフェルフィーレ様の庇護下って、貴族が頼んでも契約できるものじゃないのよ」
「ち、違うよ。それはたまたま裁判のときだけの…」
「もう、ノアはわかってないわね。裁判のときだからよ。法を守る裁判官様の前で宣言したということは、例えそれが限定的な言い回しであっても、他人からすれば…ノアはエフェルフィーレ様にとって、特別な存在だって言ってるのと同じなのよ。良いちゃんと聞いて。強力な後ろ盾を手に入れたということは、それに釣り合う悪意も手に入れてしまったのよ。気を付けなさいね」