第237話
ノアがヒガシヤマさんに助けれれている頃リオニーたちは――
ダメージを与えても…。【聖火】で肉体の再生を阻害しても…。それ以上に早く再生してしまう!? リオニーはヴァルプルギスの夜会のリーダーと互角の戦いを繰り広げていたが、不死身に近いリーダーから捨て身の攻撃を仕掛けて来られれば負けることは理解していた。
「何が目的なのですか!?」
その問にリーダーは悲しそうな顔をした。
「まだ…理解ってくれないのか!!」
その表情の意味を探るため油断した!! 向けられたリーダーの掌から赤黒い剣が飛び出す!! しかし、か、体が…動かない!? まさか…英雄スキル!? リオニーは英雄の支配を無効にするため何重もの対策を練ってきた。それでも…一瞬体の自由を奪われてしまうとは!!
その赤黒い剣を異端審問官ディオン・シュルツの鎌が叩き落とす。
「お前は…リオニーなのか?」
商業都市サナーセルの街中、しかも『ムーンレイク使い魔店』で戦えば、その意味を知る…商業都市サナーセルの管理運営を任されているマチアス・サナーセル子爵の耳にも入るだろう。サナーセル子爵は、都市直属の騎士団と異端審問官を送り込んだのだ。
「事情は…後で説明します。お父様は…どちらの立場で戦うのですか?」
ヴァルプルギスの夜会か、異端審問官か、溺愛する娘からの問に「勿論…お前の父親としてだ!!」と答えた。
「リオニー、リーダーの再生の秘密は、両手の印にあります。両手を切り落せば、今までと同じ速度で再生することは困難になるでしょう」と姉のセレスティーヌ・ヴェラーが言った。
「お姉様!! どうして…」
「金品よりも、地位よりも、権力よりも…貴方が大事だということ。無心の行動が生み出した結果。しかし、今の私には…リーダーに対抗できる使い魔が居ません。そこの灰狼侍、こちらに力を貸しなさい」
雷の王と呼ばれた魔術師アルカージーの雷は、リーダーよりも街を破壊していたため、都市直属の騎士団と異端審問官は、こちらの討伐を優先させていた。なので灰狼侍・改のアウギュスタは、抜けても問題ないはずだと結論づけた。
「拙者は、ただの灰狼侍ではないでござる。灰狼侍・改のアウギュスタ。拙者たちは…」
「ノア様の使い魔でコン!! 先にリーダを倒すでコン!!」
「任せなさい!! 使い魔における研究の第一人者とされる私が、貴方達をきっちりとサポートします!! リーダーの両手を斬り落とすのですよ!!」
セレスティーヌ・ヴェラーは、リーダーに攻撃を仕掛けるアウギュスタと、鋼巨兵のラヴレーンチェフに【強魔】スキルを発動させた。二体の魔物と同時に異端審問官ディオン・シュルツも走り出す。
リオニーは、ノアの使い魔とお父様が…リーダーの両手を斬り落とすことを信じて、左手の世界の叡智の杖に残りの魔力全てを注ぎ込む。
しかし、リーダーはそれでも笑っていた。勝利を確信したように…。
リオニーは、ハッする…。背後で…殺意が芽生えたのだ。振り返ると、ナイフを持ったリリアナが、マーシャルさんを刺していた…。いや、マーシャルさんが…私を、リリアナから護ってくれたのか…。




