第233話
「はぁ…。これだからノアに任せられない。あれだけ痛めつけられた相手なんだよ? もっと…絶望を味あわせるなり、嵌めてから倒したりしないと!! 何で場を盛り上げないかな!? ノアは!! 読者もがっかりだよ!!」
商業都市サナーセルの『ムーンレイク使い魔店』に帰ったノアは、猫亜人のアネッテに説教を喰らっていた。
「あっさりと倒すのは物語にインフレを起こしやすいんだよ?」
「アネッテの知識って、ヒガシヤマさんの世界のマンガの話しだよね…」
「違う、世界共通の話し!」
「アネッテ! あそぼー!」リリアナとジュディッタが部屋に入ってきた。
「うん。待ってて、このお姉ちゃんが悪い子だから、メッってしてたの。良いかな…ノア、次は私も連れていくこと!!」
「は、はい!!」
ふぅ…。とため息を突き立ち上がると、今度はセレスがジト目で見ていた。
「こ・ろ・す・なって言っただろ!!」
側頭部をグリグリと拳で締め上げられた。
「いたーーーーーっ!! し、しかた…なかったの!!」
「う・そ・つ・く・な!!」
「ぎゃーーーーーっ!! ご、ごめんなさい!!!」
「煩いっ!!」
マーシャルさんの一喝により、その場は収まった。
「全く…未だに信じられやしないよ。無視も殺せないような顔をして…この娘は…」
「ノアは快楽殺人鬼ではありません!!」
「で、ノア。未来が読み難くなった訳だが…どうするつもりだ?」
「聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムに会いに行きます。彼女は…気まぐれかも知れませんが、何度も私やリオニーを助けています」
「今度は俺も行こう」
「でも…リリアナとジュディッタの護衛は?」
「私が…」
「リオニー? まさか…そんなに早く!?」
「『世界の理から外れた世界』の時間の流れを、こちらの世界と切り離しました。あちらでは数年立っています」
「んー…」まるで成長の見られない…特にリオニーの胸を凝視する。
「ベースは…リオニーの肉体ですが、タムリンの肉体に引っ張られてて、肉体年齢はあまり変わっていません。こっちの世界で数日慣れれば問題ありません」
「本調子じゃないのね。なら真・冬狐姫のカルメンシータ、灰狼侍・改のアウギュスタ、鋼巨兵のラヴレーンチェフ、それと猫亜人のアネッテを護衛に付かせます」
「とんでもない使い魔だね」と、マーシャルさんは感嘆の声を上げた。
「ふふっ。ノア自慢の使い魔たちです」
「それで、聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムは何処にいる?」
「工業都市ヨレンテです。もうすぐ暗殺者に命を狙われます」
「ノア…お前、それで…聖女を助けるのかい?」
「あっ!? 聖女を暗殺者に殺させれば…とか、マーシャルさん鬼畜です!!」
「助けた後、殺す方が酷いと思うけどね」
「あぁ…ノアは…どっちを選択するのが良いのでしょうか!?」
ブシューッと、頭から煙が吹き出す感じだ。
「ノア、リオニーも力を得たんだ。ヴァルプルギスの夜会を壊滅させる時が…来たんだ!!」とセレスティノ・ヘルメスベルガーが高らかに宣言した。




