第228話
「皇位継承第4位のセレスも11歳だと可愛いのね。英雄スキルを奪われ、各国を虱潰しに探していて、偶然…私を見つけ【隠密】スキルを使い近づいたけど、バレて驚いたってところかしら?」
「な、な、な…なんなんだ…お前は!?」
セレスは、教会の屋根の上にいた。何故、そんなところに? と言いたかったが、恐らく格好いいからとかそんな感じなんだろうと思い、聞かない優しさを発動させた。
「でも軽率よセレス。貴方から英雄スキルを奪えるのだから…弱体したセレスが勝てるはずがないじゃない」
「あれは…戦いなんかじゃない! 不意打ちだ! それにセレスとか馴れ馴れしいぞ!?」
「そう…。でも、ノアが敵だったら…セレス貴方は死んでいたわよ?」
「ノア? お前の名はノアか? 俺よりも年下っぽいが…お前は何者なのだ?」
「うーん…。そうだなー…。セレスって、暇なんでしょ?」
「ひ、暇言うな!! 俺は…」
「いいから、いいから、あのね。丁度、これから10日後ぐらいに、ノアが何者かを…特定の人物に説明する機会があるから…それまで、家に来ない? 家と言っても…ノアは住み込み見習いだけど…」
「住み込み見習いだと!? そ、そんなわけあるか!」
「じゃ…ノアを信じて付いてくるなら…英雄スキルを奪った犯人は…知らないけど主犯を教えてあげるけど?」
「しかし…」
「あら? 英雄スキルを奪い返そうとしているのに、こんな可愛い女の子が怖いの?」
「可愛くない…ぞ」
「むきーっ!!! ノアは…傷付きました…帰ります…」
「あっ! 待て! 外見じゃない! 外見は…可愛い、可愛すぎる!」
「可愛すぎる!? 良いでしょう…。なら、ついてきなさい」
◆◇◇◇◇
「最近寝付きが悪くて、やっと寝たというのに…で、誰だいその子は?」
寝ていたところを起こされ、マーシャルさんは、ちょっと不機嫌だ。
「この子は、メンディサバル帝国、皇位継承第4位のセレスティノ・ヘルメスベルガー様、11歳です」
「……本当かい?」
「紛れもない真実だが、今は…一介の旅人だ。ただの子供と扱ってくれ」
「調べようにも調べられないからね。そういうことにしておくよ。ただ、もう今日は遅い。しかし…11歳の男の子とノアを一緒のベッドで寝せるわけには…」
「ノアは平気だよ。それにセレスは立場があるし、騎士道ってのもあるから、ノアを襲ったりしないよ」
「だから…こそなんだけどね」
「私は、ソファーでも床でもかまわない」
「はいはい。大丈夫。一緒に寝ようね」
「「だから!!」」
結局、タムリンの部屋にセレスが、ノアはマーシャルと寝ることになった。
◇◆◇◇◇
翌朝、目覚めたばかりのジュディッタは、相変わらず猫亜人のアネッテにべったりと付き纏い。アネッテの背中に隠れながら、「このお兄ちゃん誰?」と聞いてきた。
「うーん…皇子じゃなくて…セレスお兄ちゃん! 沢山遊んでくれるよ?」
「えっ!! お兄ちゃんも、遊んでくれるの?」
おい、どーしてくれるんだと、セレスに睨まれる。
「ノ、ノアは…お仕事があるから、朝ゴハンを食べたら三人で仲良く遊んでいていてね」
こうしてセレスは、タムリンが帰ってくるまで、一般的な? 庶民の生活を経験して「庶民は、庶民で大変だが…庶民ならではの幸せってものがあるのだな」と感心していた。




