第223話
営業前、厩舎の魔物に餌を与えていると、白角兎の様子がおかしい。
これは…例のクランダル病のイベントかな? 事前に治療してしまうと、ノインさんと白角兎の熱い友情が見れなくなるけど、元から仲良かったもんね。
それに白角兎を治癒したことで、徐々にノアの治癒の噂が広まり始めるからね。
マーシャルさんに報告して、白角兎のずれた角の位置を直してあげる。そして、【蘇魔】スキルをかけて、静かな部屋でしばらく寝かせることにした。
あれ? でも白角兎がノインさんに買われる日って、今日じゃないの? あらら…また、未来が変わってしまっているかも…。
あっ。そう言えば、初回は…。裁判所に行くからドタバタして、白角兎の様子がおかしい件をマーシャルさんに報告し忘れたんだった。と、思い返していると、案の定、衛兵さんが迎えに来た。
流石に13回目になると落ち着いて、裁判官のお爺さんと罪状を確認したり、証人として法廷に入る冒険者エフェルフィーレの名演説を余裕を持って聞いたりと、不謹慎だが裁判を楽しんでいた。
罪人グラハムに関しては、いつものように、犯罪奴隷としてアドレクレス領地内にある黒鉄鉱山にて無期限労働が確定した。
次のイベントは、成体になった緑吊し上げ花の処分だったはず。魔物を統べる者として、どうなんだという気持ちはあるが、世界中の魔物を救えるわけではないのだ。それにノアが魔物大好きなのを知っていて…魔物をノアの目の前で殺さなければならない、タムリンの心の痛みも今なら理解る。
次々とイベントを吟味しながら、ノアは未来を築き上げる。そして、いよいよリオニーとヒノデリカとの出会いイベントが発生するのです。
ヒノデリカに関しては、ノアかリオニーが、忽然と姿を消さない限り、ヒノデリカの【名匠】スキルは覚醒しない。
問題はリオニーなのだ。ノアが姿を消さなければヒノデリカは【名匠】スキルは覚醒しないため、リオニーがヒノデリカを連れて逃げることにはならない。
しかし、リオニーにはまだ二人の関係者がいて、その扱いに困っている。ヴァルプルギスの夜会のメンバーで、実の姉であるセレスティーヌ・ヴェラーと、育ての親である異端審問官ディオン・シュルツだ。
何度かタイミングを変えて暗殺したり、不正を完璧な証拠を添えてアンブロス王国に密告したこともあった。しかし、どれもリオニーの心に深い影を落とす結果となってしまったのだ。
唯一リオニーは、凶悪なスキルや加護を受けない人物で…。あっ!? リオニーにタムリンの後継者になってもらうルートは試してないな…。
リオニーに関しては、どれが正解なのかノアには理解らない。リオニーのために14回目の『強くてニューゲーム』に挑戦することになるかも知れないが、ノアはリオニーが幸せになるためならば何度でも未来を変えてやる!!
礼拝堂へ向かう途中で出会うリオニーとヒノデリカは、まだ子供らしい表情を保っていた。ちょっとエロチックなヒノデリカと、ちょっと大人びているリオニー。
そして、ヒノデリカからペーパーナイフを渡されると、思わず涙が込み上げてきた。
「そ、そんなに!? う、嬉しいけど…ノア、大げさだな」
ど、どうしようと!? と慌てるヒノデリカに、リオニーは大笑いしていた。




