第221話
「いらっしゃいませ。ムーンレイク使い魔店へようこそ」
「元気が良いな坊主。攻撃用の魔物で良いのはいるかい?」
来た! 偽金貨イベント…つまり商業都市サナーセルでも有名なBランク冒険者のエフェルフィーレさんのイベントだ。
初めてのときは、エフェルフィーレさんに助けられた。2回目以降は、犯人をぶち転がしても、追いかけなくても、衛兵に突き出さなくても、結局エフェルフィーレさんと出逢ってしまった。だったら、今度は…。
「攻撃用ですか。でしたら赤毒蛇か…」と、いつものように赤毒蛇をおすすめすると…。
「合計で金貨14枚になります」
「なら、ほら、15枚だ。1枚は坊主。お前が取っておけ」
男が渡そうとした金貨を手に取る前に、ノアは男の腕を掴んだ。
「偽金貨では…お買い物できませんよ?」
「こ、このガキ!! 舐めるなよ!!」
男は赤毒蛇の入ったケージを床に投げ捨てると、ポケットからナイフを取り出す。
「ペルペトゥア!」銀溶液のペルペトゥアが懐から縄状になって飛び出し、男の体をぐるぐる巻きにする。
「何事だ!?」勢い良く店に入ってたのは、エフェルフィーレさんだった。
待て! 待て! エフェルフィーレさんって、そんなに重要な人物だったけ!? エフェルフィーレさんの死亡ルートは、メンディサバル帝国の侵略ルートだ。
メンディサバル帝国を戦わせないためには…どうするんだっけ!? 今まで開戦しなかったことがない…。開戦した場合、勝利の門の破壊が分岐フラグとなる。幾つかの『強くてニューゲーム』では、勝利の門を破壊しないで長距離戦術級兵魔導器がメンディサバル帝国軍を一掃した記憶もある。
多くの人が死ぬのは見たくないが、リリアナがメンディサバル帝国にいなければ、ノアは…帝国兵が何人死のうと…狡いけど…目を瞑ることにしたのだ。
そうだよ。メンディサバル帝国軍の10万の命より、エフェルフィーレさんの命の方が、ノアには重たいのだから。
◆◇◇◇◇
店内の騒ぎを聞きつけ、マーシャルさんとタムリンも屋敷から出て来た。赤い瞳が燃えるように怒りを表現するタムリンを落ち着かせるのに大変だった。
「で? この男を衛兵に突き出さないって?」マーシャルさんは不思議がっていた。
「衛兵に出すと裁判とか大変じゃないですか!?」
「しかし、犯罪は犯罪で、罪を償わせなければならない。この男を解放して別の誰かが傷つく事があったら、ノア、君にも…責任がないとは言えないのだぞ?」
エフェルフィーレさんの言う通りだけど…。なんなら【洗脳】スキルで…いや、スキルを隠さないとは言え、それは違うよね…。
あっ! この人が…店何に入ってきた時、【洗脳】スキルで対処すれば良かったんじゃない!?




