第217話 三年後
メイナード荒野の戦いから一年後、ヴァルプルギスの夜会の部下を失ったリーダーは、単騎でメンディサバル帝国の宮殿に忍び込み、リリアナと再会を果たす。
二人の実力は甲乙付け難い。しかし、リーダーは、英雄スキルを行使して、5つの属国とメンディサバル帝国、3000万の民を人質としていたのだ。
「もう一度尋ねよう。リリアナ。選べ、我が妃となりヴァルプルギスの夜会が世界を統べる手助けをするか、死んで魔王スキルを俺に差し出すか」
このようにして、ヴァルプルギスの夜会のリーダーは、メンディサバル帝国の皇帝ヴァルプルギス・ヘルメスベルガーとして、帝国を手中に収めた。
メンディサバル帝国は、民を徴兵し50万の大軍勢を作り上げると、勝利の門を失ったアンブロス王国へ進軍を再び開始し、虐殺と強奪の限りを尽くすと、そのままペラルタ王国、キルスティ共和国とすべてを食い尽くしていった。
この一連の戦いの中、アンブロス王国を守るために、世界の理から外れた世界から出ていったリオニーとエフェルフィーレも戦死してしまう。
そして、メイナード荒野の戦いから三年後…。
レナータは、戦いで荒らされ働き手も失った結果、飢饉に見舞われ…人々の死骸が、日常的に道端に溢れ返り、疫病が蔓延する…人間社会が崩壊した…そんな世界を呆然と眺めていた。
魔法都市ヴェラゼンは、アンブロス王国へ進軍したメンディサバル帝国により破壊されてしまったが、この世界には、まだ三体の強力な個体が残っている。
メンディサバル帝国に対抗するエストラダ神国。つまり、神力と魔王スキルの保持者リリアナ、現英雄スキルと天界から追放された悪魔のタムリンの成れの果てである現皇帝、それに対抗する始まりの魔剣のジュディッタだ。
レナータは願う。世界が窒息する前に…後二人…滅んでくれと…。
◆◇◇◇◇
ノアは、あの日…。ノアが運命の中心である可能性を示唆され…心が折れた。
精霊体になって、世界に自分の体を分散させ、現実から目を背けてしまった。リリアナが脅迫され妃になったことも、リオニーが死んでしまったことも、世界が終焉に向かっていることも…知っているけど、手を出さなかった。
ノアの心に再び火を灯したのは…リッチャルディ諸島から大陸へ渡り、斬首される直前にフロランタンが祈った言葉だった。
「ノア…死んでも…愛し続けるから!!」
恨み辛みでも、謝罪でもない…愛にすべてをかけた…その一言。
『そこまで…本気だったの? もしかしたら…ノアが…悪魔なのかも知れないんだよ?』
首を刎ねられたフロランタンの頭が地面を転がり、ゆっくりと魂が体から離れていく。ノアは、精霊体のまま…フロランタンの魂に語りかけた。
『ノア…会いたかったよ…。ありがとう…。先に待ってるから…。この世界で最後まで頑張って…』
ヒガシヤマさん…やっぱり愛だね。
ヒガシヤマさん…私、ヒガシヤマさんを卒業します!!
ノアが、世界に抗える唯一の手段は、新しいスキルを創造すること!!
創造したスキルを司る神になること!!
決めた!!
いや、決まってたんだよ。
ただ…ノアの自己中になってしまうから…良いのかわからなかったけど…。
どうせ、ノアが世界を滅茶苦茶にしたのなら…。
『スキル創生:強くてニューゲーム!!』
『第五部 その手から零れ落ちるもの』で終わらせようとしましたが、
やっぱり、悲劇まみれのノアに大逆転劇をさせてあげたいじゃないですか!?
という訳で…次回から『第六部 強くてニューゲーム』が始まります!!
パチパチパチパチ…。




