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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
216/243

第216話 ノア編

「小手調べはここまでですよ!! リリアナ…。あれ?」


 ちょっと前に見た風景…。草原と一軒家だった。


「ノア。勝手に、世界の理から外れた世界から出ないでください。取り敢えず中に入りましょう」


 納得いかないが、レナータを怒らせると面倒だ。大人しく従おう…。


「えっ…。リオニー!? と…。エフェルフィーレ…。なんで!?」


 一軒家のベッドに…ずっと探していたリオニーがいた。疲れ切った表情は、今までの旅の過酷さを知るには十分だった。だって…。ノアも同じだったから…。


「エフェルフィーレには触れないでね。感染症を防ぐため強力な結界が張ってあるから」

「わかった…」


 リオニーの手を持ち上げ両手で包み込む。ごめんね…と、謝罪しつつ【看破】スキルで、リオニーの過去を読み取る。


「ジュディッタ…なんてことを…」


 ジュディッタの仕出かした事に驚き、ノアはどうするべきか答えを見つけられないでいた。すると、リオニーが目を覚まし、言葉よりも先に抱きついてきた。


「頑張ったね。リオニー。後は…ノアに任せてよ」

「……ごめんなさい…」


 リオニーはノアを刺した事を謝罪しているのあろう…。


「うん。もう大丈夫だから…」

「私…また…守れなかった…」

「うん。ノアの育て方が間違ってたかな…。ジュディッタが…あんな事をするなんて…」

「知ってるの?」

「うん。リオニー…。ノアこそ…ごめん…。どうして良いかわからないよ…」

「もう私の予測を超えています。ここで雌雄を決するまで見守るしかありません」

「えっ…。タ、タムリンなの!?」


 そうか、リオニーにもタムリンとレナータの事を説明しなければ…。それにノアもレナータに聞きたいことは沢山ある。


 リオニーはベッドで泣きながらレナータの話を聞いていた。


「…そう…。タムリンも…お父さんもお姉ちゃんも…ヒノデリカも…みんな死んでしまったのね…」


 その原因の一つにマーシャルさんの名前まで上がっていた。


「レナータ! 本当にマーシャルさんが!?」

「えぇ…。間違いないわ」


 レナータの話では、メンディサバル帝国とヴァルプルギスの夜会が、メイナード荒野の国境付近でぶつかり合う事は想定外だったらしい。しかも、ノアが参戦し…長距離戦術級兵魔導器カエルム・フォルトゥムまで放たれることは大きく未来が変わっている証拠だという。


「ノア…。動揺しないで聞いて欲しい。これは客観的に考えた結果なの。ノアが…神々と接触した時、大きく歴史が動き出しているのよ…。古い順に言えば、マーシャル、タムリン、ヒノデリカ、勇者スキルに関するヴァルプルギスの夜会、レナータ、リリアナ、ジュディッタ…どうかしら…全部…聞き覚えがあるでしょ?」

「ノアが…原因!?」


 でも…。ノアだけじゃ…ないよね…。メイナード荒野の戦いはノアが行く前から…だもんね…。必死に否定しようと…考えれば考えるほど、混乱していく…。

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