第210話 リリアナ編
「私より前に出ないでください」
と、私に注意を促し、セレスティノ・ヘルメスベルガーは、ヴァルプルギスの夜会に剣を向ける。
「いいえ。問答無用です」
師匠であるノアと一緒にいた時間は、ほんの僅かだった。しかし、師匠に出逢わなければ…。確かに、帝国に…セレスティノ・ヘルメスベルガーに監視されていたみたいだが、今と同じ結果になっていたかはわからない。
師匠の敵は私の敵だ!!
「黒毒!!」
勇者スキルが成長のスキルであるならば、魔王スキルは記憶のスキルだ。歴代の魔王達が磨き上げたスキルを…私は自在に操れる!!
霧でも煙でもない。それに近い動きをする何かが、ヴァルプルギスの夜会のメンバーを追い詰める。
「ま、待ってくれ!! 俺達は、帝国に与するために!!」
あれは…ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー。アンブロス王国の最強の騎士であり、どの部隊にも所属しない自由騎士か…。それほどの力と地位と名誉がありながら…簡単に裏切る。
「信用なりません!!」私は彼らの話しを聞くつもりはない。
「白角馬!! 結界を!!」
今度は、セレスティノ・ヘルメスベルガーですか。領主の娘であり、師匠と同じ使い魔における研究の第一人者とされる人物。どいつもこいつも…魔王より腹黒い!!
「真なる死神の鎌!!」
今度は異端審問官か!! 人材だけは優秀だ。しかし、力の使い方を間違っている!!
しかし、恐らく神器か宝具か…そんな伝説級の武器をセレスティノ・ヘルメスベルガーは、帝国兵が持つ一般的なショートソードで受け止める。
やはり元・英雄スキル…4万ポイント持ちは伊達ではない!?
「俺を無視するなよ。ディオン・シュルツ!」
すると今度は…狂ったような青年が叫び出す。律儀な奴らだ。技を繰り出す順番待ちでも決めていたのか?
青年の魔力が膨れ上がる。これは…私達が駆け付けたときに、爆発していた魔法か?
「爆破! 爆破! 全て爆破だ!!!」
地面が揺れ爆風が土砂を巻き上げ結界に当たる。ほう? 黒毒を消し飛ばしたか…。あれで死んでいれば痛みを感じずに済んだものを…。
爆破に巻き込まれ倒れる者は、流石に一名もいないか…。
「そこの女ぁ!! 涼しい顔しているのも今のうちだ!! その顔を燃やし尽くす!!」
「不快ですね。消えなさい」




