第21話
「友達ですか? いきなりどうしたのですか? ノアにはタムリンがいます。寂しくないですよ?」
それを聞いたタムリンは嬉しそうにウンウンと頷く。
「タムリンは見た目が幼いだけで実際は18歳だ。それにタムリンにはタムリンで、別の友達がちゃんといるんだよ」
それを聞いたタムリンはドヤ顔で腰に手を当てていた。
「う〜ん。友達作っても…ですね…。遊ぶ暇もないですし…」
チラッとマーシャルさんを見る。
それに気が付いたマーシャルさんはポカリとノアの頭を叩く。
「うちは使い魔店だからね。忙しくはない分、労働時間が長いんだよ」
「痛いです! 遊べだの遊ぶだの…マーシャルさんは、ノアをどうしたいんですか!?」
「あぁ…。すまないね。師匠であり雇い主である私に反抗的な目で見たから、つい…ね。それはそうと、実は…。教会が日曜日の朝の礼拝に子供が少ないと言ってきてね。勿論、商工会のメンバーは子供だって重要な労働者であり欠かすことの出来ない主力メンバーだと抵抗したんだよ。だけど教会の権力と影響力は強く、商業都市サナーセルの貴族様や領主様経由で圧力を掛けてきたんだよ。あっ。余計なことは言っちゃ駄目だよ」
「それが友達とどんな関係があるのですか?」
「圧力としてそのまま商工会に言えないからね。未来ある子供たちの交流を深めることで将来的に商業都市サナーセルの発展に繋がると言ってきたんだよ」
「えっと…。その交流の場所が日曜日の朝の礼拝ってことですか?」
「流石だよノア、よくわかったね」
「使い魔たちの魔物たちには日曜日も休みもないのに…」
「そこは私が代わりにやるしかないね」
「いいえ! もっと早く起きて…」
「お馬鹿。魔物だって生活のリズムってのがあるんだよ。人間の勝手な都合で幼体の体調を崩す訳にいかないだろ」
「うっ、そ、そうですね…。ノアから使い魔との交流を奪うなど、教会め…」
マーシャルさんはポカリとノアの頭を叩く。
「そう言うことを外で言うんじゃないよ。教会には冗談の通じない連中がいるんだからね!」
「は、はい…」と叩かれた頭を押さえながら返事をするノア。
◆◇◇◇◇
オープンプレートをひっくり返し営業中にすると、ノアはワクワクする。今日はどんなお客さんと使い魔の組み合わせが生まれるのかと。
お客さんは来る時は来るけど、来ない時は来ない。当たり前だけど…。来ないからと言って、売り物の使い魔に必用以上に接することは禁止されている。
あーっ。ノアも使い魔が欲しい。触りたい。太ももに置いて撫でたい!! という気持ちを抑えて、マーシャルさんに買ってもらった『魔物治療百例』で魔物について勉強するのです。この本は治療目的ですが生態や特徴についても詳しく書かれているのです。
それに何処で噂を聞き付けて来たのか知りませんが、ここで購入した使いまでも無いのに治療を頼んでくる人たちがいるのです。ノアとしては合法的に、この店舗でも扱っていない魔物に触れることが出来るので問題ないどころか嬉しい限りです。しかし、マーシャルさんは責任が持てないからと言って追い返そうとするのですが、結局追い返した所で、傷付いた魔物や病気の魔物の末路は決まっているので、冒険者たちは責任を追求しないから治してくれと言ってくるのです。
ノアは思うところがあるのです。何故に【回魔】などのスキルを取らないのかと…。タムリンのスキルポイントの残高を見て理解る通り、スキルポイントは余る傾向にあるのです。ならば使い魔を従えるのなら【回魔】や【治魔】などのスキルは取得するべきだと思うのですよ。
(それは間違ってる)
あっ。気が付かないうちに、タムリンとの念話になっていた…。