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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
205/243

第205話 ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー編

  アンブロス王国との国境付近に広がるメイナード荒野の国境付近。両国の検問は存在せず、勝手に出入り可能である。


「結局、これでは、不法侵入ではないのか?」


 異端審問官ディオン・シュルツの嫌味に、セレスティーヌ・ヴェラーが反応する。


「私に言わないでよ!」と、口喧嘩が始まる前に俺は仲裁に入る。


「このまま街道を進もう。ゆっくりと歩けば、帝国の監視が見つけ、それなりの対応をしてくるだろう」


 戦闘のセレスティーヌは、白角馬(ユニコーン)に跨り優雅に街道を進む。俺の隣には、身長の倍の長さの禍々しい金属製の棒を持つ異端審問官ディオン・シュルツがいる。


「それが…例の宝具なのか?」

「あぁ…。魔剣に対抗する力だ」

「言っておくが…」

「わかっておる。ヒノデリカを殺しては、リオニーに嫌われてしまうからな」


 理由はどうあれ、ヒノデリカを殺すつもりがないことを聞けてよかった…。


 ヒーヒヒヒヒンッ!! 白角馬(ユニコーン)のいなきだ。馬の視線をたどると、そこには魔導戦艦!? が、いつの間にか俺達の真上にいた。


 ボフッ!! と、火球が魔導戦艦から放たれる。


 あれは…。どっちだ!? その軌道から俺達を直撃しないことを確認する。つまり攻撃ではなく…。


「ヴァルプルギスの夜会の新人…爆炎のアルモンテだ」


 ドーーーーンッと耳をつんざく爆音と共に着地した青年は、「いやいや、名前を言ってもらったのは、久しぶりだよ。聖女様、俺の名前に興味ないんだよ」と、ニタァっと薄気味悪い笑顔を浮かべる。


「はっ!? たかが爆炎使うだけで、新人が私達3人を相手にするって? 少しお仕置きが必要かしら?」


 苛立つセレスティーヌ・ヴェラーを制するように、俺は一歩前に出る。


「セレスティーヌには白角馬(ユニコーン)が、ディオンには宝具が。俺も少し力を見せておかないとね。口先だけと思われてしまうから」


 剣を抜き構える。


「おいおい。先輩。それ駄目。剣じゃ俺に勝てないよ?」


 アルモンテは右手の掌を前に突き出す。そこから数発の爆炎が放たれ、俺を狙うが…。俺は魔道具である鎧の力を解放し、4ステップでアルモンテの背後を取る。


「一応、先輩からの最初で最後の手心だ。しっかりと避けろよ!?」


 俺は挨拶とばかりに直撃しないように配慮し、アルモンテの頬に深い傷を付けた。


「ガハッ! ふ、巫山戯やがって…。スピードなんか…関係ない。爆破。周囲全て爆破だ!!!」


 確かに凄い魔力だが…。ヒノデリカの魔剣とは密度が違いすぎる。アルモンテのならば…防ぐのも簡単だろう。しかし、それより…背後に迫るセレスティノ・ヘルメスベルガーになんと説明すればよいのか…。

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