第205話 ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー編
アンブロス王国との国境付近に広がるメイナード荒野の国境付近。両国の検問は存在せず、勝手に出入り可能である。
「結局、これでは、不法侵入ではないのか?」
異端審問官ディオン・シュルツの嫌味に、セレスティーヌ・ヴェラーが反応する。
「私に言わないでよ!」と、口喧嘩が始まる前に俺は仲裁に入る。
「このまま街道を進もう。ゆっくりと歩けば、帝国の監視が見つけ、それなりの対応をしてくるだろう」
戦闘のセレスティーヌは、白角馬に跨り優雅に街道を進む。俺の隣には、身長の倍の長さの禍々しい金属製の棒を持つ異端審問官ディオン・シュルツがいる。
「それが…例の宝具なのか?」
「あぁ…。魔剣に対抗する力だ」
「言っておくが…」
「わかっておる。ヒノデリカを殺しては、リオニーに嫌われてしまうからな」
理由はどうあれ、ヒノデリカを殺すつもりがないことを聞けてよかった…。
ヒーヒヒヒヒンッ!! 白角馬のいなきだ。馬の視線をたどると、そこには魔導戦艦!? が、いつの間にか俺達の真上にいた。
ボフッ!! と、火球が魔導戦艦から放たれる。
あれは…。どっちだ!? その軌道から俺達を直撃しないことを確認する。つまり攻撃ではなく…。
「ヴァルプルギスの夜会の新人…爆炎のアルモンテだ」
ドーーーーンッと耳をつんざく爆音と共に着地した青年は、「いやいや、名前を言ってもらったのは、久しぶりだよ。聖女様、俺の名前に興味ないんだよ」と、ニタァっと薄気味悪い笑顔を浮かべる。
「はっ!? たかが爆炎使うだけで、新人が私達3人を相手にするって? 少しお仕置きが必要かしら?」
苛立つセレスティーヌ・ヴェラーを制するように、俺は一歩前に出る。
「セレスティーヌには白角馬が、ディオンには宝具が。俺も少し力を見せておかないとね。口先だけと思われてしまうから」
剣を抜き構える。
「おいおい。先輩。それ駄目。剣じゃ俺に勝てないよ?」
アルモンテは右手の掌を前に突き出す。そこから数発の爆炎が放たれ、俺を狙うが…。俺は魔道具である鎧の力を解放し、4ステップでアルモンテの背後を取る。
「一応、先輩からの最初で最後の手心だ。しっかりと避けろよ!?」
俺は挨拶とばかりに直撃しないように配慮し、アルモンテの頬に深い傷を付けた。
「ガハッ! ふ、巫山戯やがって…。スピードなんか…関係ない。爆破。周囲全て爆破だ!!!」
確かに凄い魔力だが…。ヒノデリカの魔剣とは密度が違いすぎる。アルモンテのならば…防ぐのも簡単だろう。しかし、それより…背後に迫るセレスティノ・ヘルメスベルガーになんと説明すればよいのか…。




