第203話 ディオン・シュルツ編
ヴァルプルギスの夜会に裏切り者のレッテルを貼られる前。ジュディッタが、リオニー、ヒノデリカ、エフェルフィーレを連れ、エストラダ神国に向けて、ノアが冒険者として暴れているペラルタ王国を横断している最中の話。
エフェルフィーレから、愛娘リオニーの発見の喜ばしい知らせを受けるが、それ以降の進展はなかった。何もかも捨てて駆け付けたいが、娘のいるキルスティ共和国は、真神タムリン教会と宗教戦争中のため、古代教会関連の宗教組織と異端審問官の入国は難しいのだ。
「何をしているのですか! 今すぐに、リオニーのもとに行くのです!!」
どんな手段を使って奪取したか知らないが、セレスティーヌ・ヴェラーの隣には、アンブロス王国 の象徴である白角馬がいた。
彼女は、リオニーの実姉だ。リオニーは、シュルツ家に来る前のクリスティーナ・ヴェラーとして、ヴェラー家で何不自由することなく、大事に育てられていたのだ。
そんなセレスティーヌに檄を飛ばされ、行動した結果…。草原の街道に…娘が目の前にいるのだ。
「リオニー!!」
「お父様!?」
娘は、私が雇ったBランク冒険者のエフェルフィーレ、伝説の武具を作成可能な固有スキルである【名匠】を持つヒノデリカ、そして、真神タムリン教会の聖女ジュディッタと複数の護衛といた。
「迎えに来た。お前は頑張った。友達のヒノデリカを護っていたのだろう? これからは安心していい。私と、お前の姉クリスティーナで、必ず安全を保証しよう」
「お父様。私が…何も知らないと思っているのですか!? そこにいる…メンバーは、ノアを、勇者スキルのために、私を洗脳して…ノアを殺させようとして…。それにノアを殺したメンバーじゃないですか!!」
娘はタムリン譲りの巨大な死神の鎌を召喚した。まさか、戦うつもりなのか!?
「姉と父の言うことが聞けないのね。躾が必要かしら?」
「待て、セレスティーヌ!」
「そうだ。熱くなるな。話し合いは重要だ」
ヨハネス・ケルヒェンシュタイナーは冷静に油断なく状況を好転させようと画策する。
「ヴァルプルギスの夜会と、何を話すことがあるのですか?」聖女ジュディッタも抗戦の構えだ。
「お前らかぁ!! ノアを、ノアを…殺す!! 殺す!!! 絶対にぃ!!!!」
ヒノデリカの右手が、禍々しい力を放つ剣に変わる!?
「死ねぇぇぇ!!!!」
たったひと振りだった。その衝撃波は、地面を底が見えなくなるまで消滅させ、遥か後方の丘を吹き飛ばした。
私達は、セレスティーヌの使い魔になった白角馬の近距離転移魔法によって、助けられたのだ。
「アレが…【名匠】スキルの魔剣!? あんなものを量産されたら…」ヨハネス・ケルヒェンシュタイナーは、苦笑いするが…。同意するしか無い。
「白角馬、退却を!!」
セレスティーヌの判断により、その場から退却する。しかし、最後に見た娘の口は、「さよなら」と言っていた。




