第20話
「またですか!?」
「お客様に何て事言うんだい!」
マーシャルさんにポカリと叩かれる。
だって…。と心の中で呟くノア。
「いやぁ…。使い魔って育てるの難しいね」
このお客様はフェリオスさんと言って、ここ数日連続して使い魔を購入しては、迷宮で殺して帰って来る…ある意味常連さんだ。
その慎重さの欠片もない性格のため、他の冒険者と反りが合わない。だから使い魔を購入しようとも結果は変わらない。恐らく至る所で、「冒険者に向かない」とか「命があるうちに辞めろ」等と言われ本人も焦っているのだろう。
「僕はね。三男で家を継ぐことが出来ない。かと言って、何かの才能があるわけでもない。だから冒険者で頑張るしか無いんだよ。だけど…流石に毎日使い魔を購入していると、親からの支援金も底をつきそうだよ」
ノアは何の才能も無いという点に共感する。
「フェリオスさん自身は、どのような戦い方をするのですか?」
「ぼ、僕? 使い魔を先に戦わせて、後から止めを刺す感じだけど。僕が突っ込むと、魔物が僕にターゲットを移したり、他の魔物がリンクしちゃったりして、結局…使い魔を犠牲にして逃げ帰るパターンだね」
「ちょっと鑑定しても良いですか?」と断りを入れる。
次に使ったスキルのランクを一時的に上げる勇者の【拡張】スキルを発動させて、【鑑定】スキルをフェリオスさんに使用すると、上位スキルの【看破】が発動した。
一般スキルには、他の冒険者と同じようなスキルが並んでいたが、なんとフェリオスさんは固有スキル持ちだった。
【鉄壁】… 盾術を強化する。また敵意を集める。
やっぱり思った通りですね。
フェリオスさんに売った魔物の中には、敵意を集める事が得意な黒岩鰐がいました。
その黒岩鰐からターゲットを変更させるなど、近付いただけとか…絶対に無理で、一般スキルの【敵意】スキルを連続で使用しないと無理だと考えたノアは、フェリオスさんが強力な固有スキルを保持してると結論付けたのです。
「フェリオスさん? 多分ですが、固有スキル持ちなのでは?」
「ぼ、僕が!? そんな高価なスキル持ってるわけないよ」
あーっ。本当に知らないのですね。では何処で手に入れてのですかね?
「一応、ギルドカードで確認してもらえませんか?」
そんな馬鹿なと言った様子で、ギルドカードを確認するフェリオスさんの表情が固まった。
「ほ、ほ、本当に…。あ、あった…。【鉄壁】?」
「【鉄壁】スキルと言えば、盾役の戦士が喉から手が出る有名な固有スキルじゃないかい? 値段だって…途方もない金額だったはずだよ?」
「そ、そのスキルに敵意を引きつける効果があったりしないのですか?」
「わ、わ、わ、わからないよ。何故持っているかも、効果も…」
マーシャルさんの指示で、フェリオスさんと商業ギルドのスキルブックを閲覧した後、ファリオスさんは、納得したのか…攻撃専門の赤毒蛇を購入して帰りました。