第199話 ジュディッタ編
ノアの居場所…。正直言って知らない。しかし、雷神鳥にお願いすれば、ノアは…駆け付けてくれるだろう。
ノア…。私の知る限りで最強のハンター。
明らかに、『その者たちは運命の天秤を動かす…小さな小さな分銅ですが、その者たちの扱いを誤れば世界は崩壊してしまうでしょう』に対して、何かを左右する…人物だろう。
ノアを引き合わせて良いのだろうか?
しかし、神は何も言わない。何の啓示も授けてくれない。
私の…選択次第ということなのでしょうか?
「居場所は解りません。放浪の旅をしていましたから…。生きていますし、元気に何処かでハンターの仕事をしていると思います。それに…思い出しましたが、リオニー、ヒノデリカ…。ノアは、あなた達を探していました」
「ノアが…私達を…」
「はい。私は、ノアに盗賊の頭である父親を殺されましたが、それ以上の…ノアから…施しを受けました」
盗賊の娘として生きていたとき、父は憧れの存在であり尊敬に値していた。しかし、ある少年に出会い、全てを否定された。あの少年は、今何処で何をしているのだろうか? そして、父は憎むべき相手になり、ノアに殺された。
私が感傷に浸っていると、ドアがノックさ使いの者が入室してきた。
「聖女様、そろそろ…会議が始まりますので、移動をお願いします」
「わかりました。すぐに行きます」
私は、リオニー、ヒノデリカ、エフェルフィーレに向き直り、「重要な会議があるため、席を外させてください。リオニー。まだ話さなければならないことがあります。お願いですから、私の前から姿を消さないでください。ノアへの恩返しをさせてください…私を頼ってください」と懇願する。
「まだ…傷が癒えていません。見ず知らずの貴方に甘えてしまって申し訳ないと思っていますが、ここで休ませてもらいます。それに…ノアの事をもう少し…聞きたい」
「はい。会議が終わったら、食事にしましょう。そのとき、またゆっくりと…。それとリオニー? エフェルフィーレは信用に値すると思ってよろしいのですか?」
「…はい。無理に私を…ここから引きずり出すようなことはしないと思います」
「そうですか。エフェルフィーレ。リオニーの信頼を、私の信頼を裏切らないでくださいね。剣はお返しします。リオニーとヒノデリカを…何者かから守るため、協力をお願いします」
エフェルフィーレは静かに頷く。
「私にとって、これが冒険者として、最後の依頼だった…。リオニーを見つけることが依頼内容で、連れ帰ることじゃない」
「そうですか…それでは、失礼します」
退室して、パタンとドアを閉める。
ノアを…二人に合わせると…何かが始まってしまう…そんな気がする…。だから、今は、まだ引き合わせることは…しない。
この選択が間違っていたことを誰が批判できようか? ノアとリオニー、ヒノデリカが巡り合う機会が失われ、世界がまた一歩、混乱へと傾く。
そして、ジュディッタが出席した会議の議題は、エストラダ神国から聖女に対しての召喚状についてであった。
「エストラダ神国から…私に? 理由はエストラダ神国で話す…ですか…」