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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
193/243

第193話 聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルム編

 都市バルテの遥上空、魔導戦艦の一室で、聖女は雑務に追われていた。


 その内容は一にも二にも、真神タムリン教会関連のことである。


 実際、真神タムリン教会の勢力拡大に被害を被っているのは、古代教会ではない。古代教会は各組織を裏から操る黒幕的な存在なのだ。現在のところ最大の被害者は、エストラダ神国であった。


「何が…そんなに真神タムリン教会が良いのですかね?」


 忙しいのに、くだらないことを聞くなと…聖女は思った。しかし、目の前にいるのは、小太りの紳士マチューは同様に、新たにヴァルプルギスの夜会のメンバーとなった新人の青年だ。


「エストラダ神を国名にする程、神に依存した国です。その国民が、日々の不公平感、どんなに信仰心を持っても貧しく発展しない国に嫌気が差し…貢物を何も差し出さずとも祈るだけで、幸せに導くとされている真神タムリン教会に心が傾くのは…当然です」


 元から信仰する意志は強い国民なのだ。一度、信頼を失った神を捨て、希望を持たせてくれる神に命を捧げる程の熱狂的…いや狂気的な国民の勢いを国が抑え込む事は難しかった。


「キルスティ共和国で、発祥の地を潰したと思えば、今度は…エストラダ神国ですか…」


 面倒くさそうに言っているが、お前は何もしていないじゃないかと、聖女は思った。この新人は、聖女の護衛役であるらしいが…。


「今、何もしてないだろ!? と、はっきりと思いましたね? 顔に出てましたよ。しっかりと仕事はしています。何せバルテの大部分を焼き尽くしたのは、俺のスキルですから。考えても見てください。こんな小さな魔導戦艦に街を焼き尽くすほどの火器があると思いますか?」

「あると思っていましたが?」


 そんなことより、聖女の思惑では、聖戦としてエストラダ神国に邪教徒の集まりであるキルスティ共和国を攻め滅ぼせさせようとしていたのだ。


 攻め滅ぼすどころか、逆に陣営最大であるエストラダ神国を乗っ取られ、聖女の最大戦力を失ったのだ。


 さらなる被害拡大を防ぐため聖女は考える。


 偽聖女がバルテで死亡したとの情報はない。しかし、偽聖女の情報網も侮るわけにはいかない。


「万が一に備え、エストラダ神国へ繋がる街道に異端審問官を配置するのです。偽聖女を近づけさせるわけにはいきません」


 今のエストラダ神国に偽聖女が現れたりしたら、あれよあれよという間に国の頂点に上り詰めてしまうだろう。


「しかし、自分たちの保身のために…古代教会に隠し事をし、あまつさえ国政の舵を失うとは。愚かと言うしかないですね」

「聖女様は大変ですね」


 煩いと思いながらも、テーブルに置かれている新しい資料を手に取る。


「アンブロス王国関連?」


 聖女は資料を何ページかめくる。


「ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー、ディオン・シュルツ、セレスティーヌ・ヴェラーに離反の疑いあり!?」

「聖女様! 裏切り駄目。絶対に駄目。ぶち殺しに行きましょう!!」

 

 ヴェラーの戦力はゼロとして… ヨハネスとディオンを倒すのは簡単な話ではないのだ。

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