第191話 ノア編
何処へ行くか悩んだノアは、通り過ぎたことしか無いペラルタ王国に目的地を決めた。
ノアは、猫亜人のアネッテと二人で乗っても問題ないくらいに成長した黒飛竜のカスの背中から、ペラルタ王国の上空を旋回していた。
「王都はゴミゴミして嫌です。もっと風光明媚な場所にしましょう!」
「ノア。リッチャルディ諸島という超田舎から来たお上りさんだよ? 自然はお腹いっぱい。王都で」
「わかったから! 胸じゃなくて腰を掴んでよ!! くすぐったい!」
「あっ、ごめん。真っ平らだったから…つい…」
「意味が理解らない!!」
今度は王都上空を旋回して、東西南北何処の門が空いているか確認する。街中に降りるような非常識な人間ではないのですよ!!
「東が空いているけど、西側の方に市場とかあるね。西側にするね」
カスを急降下させ地面に降り立つ。ちょっと街道に近い場所に下りちゃったから、商人や冒険者たちが驚き逃げ惑う。
「あっ。やっちゃった…」
お騒がせしてすいませんと、ペコペコと頭を下げるノア。商人の子供たちは、黒飛竜のカスが、安全だとわかるや否や、勝手に背中に乗り始めた。
「ノア! 私も、レアな猫亜人なのですが…」
「見た目があまり人間と変わらないからね…」
そんなことをしていると、王国騎士団に囲まれていた。
「お、お前ら…な、何者だ!?」
へっぽこだな…。でも、低姿勢で丁寧に説明するが許してもらえず。迷惑料をがっつりと取られ、さらに説教まで喰らって解放された。
何でもメンディサバル帝国に不穏な動きがあるそうで、周辺各国は警戒を強めているらしい。そんなところに、王都上空を飛び回る飛竜がいたら、そりゃ…怒られるよね…。
「酷い目にあったよ」
「ノアが悪い」
「でも、帰りにリリアナに会っていこうかな。ちょっと心配」
王宮の詰め所から出たノアは、アネッテに手を引っ張られ、グイグイと進む。アネッテめ…。ノアだって、【狼鼻】スキルがあるんだ。君が何処へ向かっているか、手に取るように理解るさ。さらに【鷹目】スキルや【豹耳】スキル、それに【特定】スキルを駆使すれば、市場の屋台に向かっているのがわかった。
ノアはアネッテから串焼きを一本もらって頬張っていた。隣では、煮込みシチューや、鉄板ステーキ、川魚のフライなど、片っ端から屋台で買ってきて口に詰め込むアネッテがいた。
「孤児院の料理は健康的。だけどアネッテはジャンクフードが好き」
屋台巡りが終わってご機嫌なアネッテを連れ、ハンターギルドを探すが、見つからない。近くの雑貨屋で孤児院の子供たちにお土産を買いながら、店主に聞いてみる。
「ペラルタ王国にハンターギルドはないよ。ハンターたちはガラが悪いからね。あると治安が悪くなるんだよ」
えっ!? そうなの?