第189話 ジュディッタ編
物語は一歩先へ進む。
夕日のように真っ赤に燃え上がる都市バルテを呆然と見つめるジュディッタ。
「バルテを攻撃した敵が不明です。ジュディッタ様、ここは危険です。我々も避難しましょう」
護衛の一人に言われ、ハッとなり、頷く。
しかし、別の護衛に拘束されていたエフェルフィーレは叫ぶ。
「違う! 森の中に身を潜めるのだ! 街の上空を見ろ!! 空飛ぶ何かが攻撃をしているのだ!! 街道を馬車で走れば、夜の暗闇を照らす魔法やランプを見つけられ、同じように攻撃されるぞ!!」
ジュディッタは、この人物を知らない。いつの間に、この場にいるのだろうか? しかし、この人物の言う通りだ。
「あれは…。キルスティ共和国の魔導戦艦。しかし、何故バルテを?」
無差別で都市を狙っているのか、バルテだけなのか、バルテを狙うならば理由は、真神タムリン教会の発祥地としか考えられない。
「私の…命が狙われている!?」
明確な殺意に体が震えた。
「馬車を森に隠してください。数名で魔導戦艦を監視してください。レンズが反射する望遠鏡や魔力など、こちらの場所を探られるような事は禁止します。それと、あなた。こちらで話しをお伺いします」
小さな天幕の中、護衛に守られながら、冒険者と対峙する。冒険者ギルドのカードを確認する。偽装は不可能とされているカードだ間違いはないだろう。
「で、そのBランク冒険者のエフェルフィーレさんが、何か御用でしょうか?」
「馬車の中にいるリオニーとヒノデリカを探して、世界中を渡り歩いていた」
「世界中を? 何故?」
「リオニーの父親からの依頼だ」
「なるほど」
「話を逸らして申し訳ないが、どうしても…気になって仕方がないのだが」
「何でしょう?」
「私の友人にタムリンという少女がいた。その少女も数年前に失踪している。そして、貴方は真神タムリン教会の聖女と言う。どうしても、このタムリンという言葉に何か因果を感じてしまうのだ」
「タムリンとは神であるタムリン様です。また啓示により、タムリン様の願いを叶えるため創設したのが真神タムリン教会です。その少女との関係は、恐らくありません」
「そうか…。話しを逸らして申し訳なかった」
「エフェルフィーレさんの話しを信じないわけではないのですが、ヒノデリカは言葉を話せないようですし、リオニーが目覚めた時、もう一度、本人と一緒に確認させてください」
「あぁ、それで問題ない。それどころか、リオニーの命を救ってもらい感謝している」
「いえ、こちらこそ感謝しております。あのまま馬車で街道を逃げていたら、あるいは…。それと申し訳ないのですが、また武器をお返しすることは出来ません」
「わかっている。それでいい」
沈黙の中、ジュディッタは考え悩んだ。
「エフェルフィーレさんは神から啓示を受けたことはありますか? 神を信じますか?」
「神は…いるのだろうな。信仰心は強い方ではない。それが何か?」
「実は…あの二人について、神から啓示を授かったのです。『その者たちは運命の天秤を動かす…小さな小さな分銅ですが、その者たちの扱いを誤れば世界は崩壊してしまうでしょう』と。正直、あの二人をエフェルフィーレさんに返すのが正解なのか、私が保護するべきなのか、悩んでいます」
「小さな分銅ですか…」
「えぇ…。今話せるのはここまでです。二人が話せる状態なったら、また続きを話しましょう」
「わかった」




