第188話 ヒノデリカ編
ノアが死んだと知らされた時、私は神に祈った。ノアを殺した奴らを殺す力をくださいと…。私は魔物や人を殺す武器を作る鍛冶屋だ。怒りを恨みを呪いを込めて、武器を作り続けた。
あるとき、魔力のない私でも、禍々しい程の力を感じ取れるSランクの一本の魔剣を作り上げた。後に始まりの魔剣と呼ばれる伝説の魔剣だ。
『お前の声と寿命を…我に差し出せ。力を与えよう…』
特別な技術もスキルも保持しない一介の駆け出しの鍛冶職人が作り出した魔剣。その魔剣が命と引き換えに力を与えると言ってきた。
「わかった…。ノアの…恨みを晴らして…」
そう言って魔剣に触れた私は、魔剣に吸い込まれ…融合する。
『残りの寿命があるうちは、人間として暮らすが良い。寿命が付きた時、その肉体も魂も我の物となる…。余生を楽しむのだな…カッカッカ!!』
そして、名匠スキルを手に入れた私は、Bランクの武器を量産した。だが、魔剣と呼ばれるAランク以上の武器は、作らなかった。魔剣を作る時は、ノアを殺した奴らを殺すときだけだ。
あるとき突如、リオニーが店に現れた。リオニーは、「今度こそ…友達を守ってみせる…」と呟き私を店から連れ出した。
逃げる? 私達を追うように、驚くほどの人数が追いかけてくる。この人たちは!?
しかし、リオニーの実力では、私を庇いながら逃げることは難しいようだ。でも、何となく感じていた。こいつらがノアを殺した奴らでは? と…。ならば掴まっても良い。組織の内側から皆殺しにしてやる!! 復讐の炎が瞳に宿る。
裏路地を何度か曲がったところで、聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムの声が聞こえた!?
『ノアを殺してしまった責任は…私にもあります。だから…一度だけ、貴方を助けましょう…神の導き手!!』
聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルム!! お前も…ノアを…。
残り少ない寿命なのに、リオニーとの逃亡生活は、数年に及んだ。この逃亡生活を体験していくうちに、ノアも…こんな苦しくて悲しい生活を送っていたんだと思うだけで、怒りが込み上げてくる。そんな思いとは裏腹に、リオニーがボロボロになりながらも、泣き言一つも言わずに、私を必死に護ってくれていた。
だが、リオニーにも限界が訪れ、万全であれば敵にもならないような魔物に大怪我を負わされてしまった。
深い森の中、血まみれのリオニーを抱き締め必死に叫ぶが、声を失っているため、助けを呼べない…。ノアに続いて、リオニーまでも…耐えられない、耐えられないよ。
リオニーは、私を見つめ、「ご、ごめん…」と呟く。
そんな事言わないで!! 私を一人にしないでよ!!
そのとき、森の奥から蹄の音が聞こえ、一人の修道着のような衣装の少女が馬から飛び降りてきた。
その少女は、何も言わず、リオニーに癒やしの魔法を発動する。
ノア!? 全く容姿も異なるのに、一瞬、ノアと見間違えた。
何故だろう…。
このときは知らなかった。ノアと深い関わりがる少女だと…。だからノアを感じたのだと…。




