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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
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第187話 レイン編

 私はレイン。聖騎士候補の選抜に落ちて冒険者をやっている。実力はお察しの通りだ。しかし、こんな私達でも、Cランク冒険者として、商業都市サナーセルでは、そこそこ名が通っている。数年前にヴェラー領地を治めるエドヴァルド・ヴェラーの愛娘として有名なセレスティーヌ・ヴェラーを悪漢たちから救ったことで名を上げたのだ。


 だが何の因果か、あの時護衛した4人の少女たちは、全員が行方知れずになっていた。


 私が、そんな事を思い出したのも、きっと、この騒ぎが原因なんだろう。


 不謹慎ではあるが、何故か…心が踊っていた。


「おい! レイン、この非常事態に、何笑っていやがる!!」憤る戦士のボニファーツがテーブルを叩く。


「徹夜明けで目覚めてみたら、この騒ぎだ。どうすっかなって…考えてた」


 現在、商業都市サナーセルは、蜂の巣をつついたような騒ぎなのだ。しかも、情報が錯綜していて何が本当なのかさっぱり掴めていない。情報と言えば酒場だと、朝から酒を飲む四人組。


 出回っている情報は、以下の通りだ。


 ◎エドヴァルド・ヴェラーが暗殺された。


 ◎ヴェラー領地がアンブロス王国に反旗を翻し、独立宣言した。


 ◎領土を繋ぐ街道が閉鎖された。


 ◎アンブロス王国が鎮圧のために騎士団を派遣する予定だ。


 ◎セレスティーヌ・ヴェラーが新たな領主となった。


 ◎冒険者たちは、領土法第31条の第1項により、領地を守るため騎士団の下へ出頭しなければならない。


「俺達は冒険者だ。魔物と戦い慣れているが、人間は…盗賊ぐらいしか相手にしたことがない。大規模戦において、騎士団と戦えばボロボロにされる! 戦ってはいかん!!」戦士のボニファーツは、レインに念を押す。


 聖騎士を夢見た私は、領地や領主を護って死ぬことに憧れを抱いている。しかも、人生の分岐点となった所縁のあるヴェラー領地のことだけに…。


「ボニファーツの言う通りだ。俺達は冒険者、何処の土地へ行っても、上手くやっていけるさ」弓士のライナーがボニファーツに同意する。


「死ぬならば、最後まで、冒険者として」魔術師のゲレオンまでも。


 私は、十年来の仲間たちとの別れを決意した。


「だが、レイン。お前が戦うならば、俺達はついていくつもりだ」

「いい年こいて、騎士に憧れるオコチャマを放っておけないからな」

「死ぬならば、冒険者より、最後まで、仲間と共に…だ」


 私は涙が溢れないよに、天井を向く。


 自分勝手な私のために、今になって…やっとわかったよ。これが…仲間なんだ。これが私の求めていた…宝なんだって。


「ば、馬鹿野郎。死んでも恨むなよ」


 そのパーティーを微笑ましく見つめる屈強な戦士に化けたレナータがいた。


「どうやら、私の助けは必要なかったみたいですね」


 レナータは小さな希望をかき集め未来へと紡ぐ…。


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