第184話 ヨハネス・ケルヒェンシュタイナー編
アンブロス王国の最強の騎士であり、どの部隊にも所属しない自由騎士であるヨハネス・ケルヒェンシュタイナーは、着々と開戦の準備を進めていく帝国に対して、どのようにすれば戦局を有利に展開できるか考えていた。
まず、一番の問題は、名も知らぬヴァルプルギスの夜会のリーダーに支配されていること。
完全支配とは思考の停止。つまりリーダーが事細かに指示する必用がある。だから、命令に逆らうな程度の軽い支配なのだろう。
また、そのリーダーが何を考えているのか、計画がまったく見えてこない。
リーダーの指示は、アンブロス王国の7つの領地の内、3つの領地の独立させること。つまり内戦を誘発させること。そして、国の象徴である白角馬を奪取すること。
まず、ただでさえ強大な戦力を保持する帝国に、唯一善戦できそうなアンブロス王国を内部分裂させる意味とは? リーダーは帝国を支援するのか? 何故?
ヴァルプルギスの夜会のような個人集団が、全土を統一した帝国に対抗できるのか?
なるほど…。そういうことか。
リーダーの英雄スキルか。
全土を統一する前は、戦術や裏工作に複雑な命令が必用になるが、統一後ならば、単純な命令でも問題がない…か。
英雄スキルに、数の大小は関係ないからな…。
リーダーの目的が達成されれば、俺達も…完全支配されるのだろうな。
面白くない。
しかし、まずは命令に逆らえんからな。今の命令は、2つだけだ。これを達成して、俺は…。
そこで俺は、セレスティーヌ・ヴェラーを訪ねた。
「本来、国王の使い魔である白角馬だが、現国王の資質が足らず使い魔ではない。しかし、人外の力を持つ白角馬を操る術は持ち合わせていない。そこでお前に頼みたい」
「何故、私が貴方の手助けをしなければならないのかしら?」
「まぁ、まずは、俺の話しを聞け」
白角馬の奪取の報酬として、ヴェラー領地を治めるエドヴァルド・ヴェラーの暗殺と領主の継承を確約した。また他の2つの領地についても、ヴェラー領地に吸収合併させ1つの領地にすること。
「お前は、白角馬を奪え。領地の件、名匠スキルのガキの件は、俺に任せておけ、ガキを捕まえれば、お前の命令は完了し自由になれるはずだ。そして、3つの領地、名匠スキルのガキ、白角馬、異端審問官ディオン・シュルツと複数の部下、セレスティーヌ・ヴェラー、そして俺を土産として、帝国に取り入る」
ヴァルプルギスの夜会のリーダーの危険な考えをヴェラーは、すんなりと理解した。そもそも裏切るつもりだと言っていた。
「組織が、ヴァルプルギスの夜会から、帝国に変わるだけか…」
「贅沢を言うな。完全支配よりはマシだ」