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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
183/243

第183話 リリアナ編

 レイナルド皇帝に乱暴に抱かれたリリアナは、シーツに顔を埋め声を殺して泣いていた。まるで捨てられたようリリアナをメイドたちも困惑し、同対処してよいか悩んでいた。


 しかし、その現場の様子とは裏腹に、リリアナの心は、レイナルド皇帝に鷲掴みにされていたのだ。


「愛するレイナルド…、可哀想なレイナルド…」


 宮殿の浴場で、湯船に浸かるリリアナは、何の力にもなれない自分に腹を立て、レイナルド皇帝が蝕まれていく姿を憂いていた。

 

 リリアナは知らないが、そもそもの原因は、ノアから奪い取った勇者スキルであった。スキルが意思を持ち、レイナルド皇帝の心を、魂を、侵食していたのだ。


 リリアナは、師匠であり、元の持ち主であるノアに、手紙で相談しようかと…何度も、何度も、考えていた。しかし、ノアの過去に何があったのかは、ノア本人や皇位継承第4位のセレスティノ・ヘルメスベルガーから、何となく聞いていたため、相談することを躊躇していた。


 宮殿でレイナルド皇帝の帰りを待つ事しか出来ないリリアナに、セレスが尋ねてきた。セレスの顔を見れば、良くない報告だろうと推測できる。


 リリアナは、メイドに用意されたお茶を一口飲むと、セレスの話を待った。


「執務室に来た兄を【看破】スキルで見てみれば、勇者スキルが魔王スキルに変化していた」

「魔王スキル?」

「あぁ。近頃の兄は、精神的に不安定で、残忍な正確に変貌しているのは、お前も知っているだろ」

「心ば蝕まれているのは感じていました」

「魔王スキルについては、殆ど情報がない」

「師匠ならば何か知っているのでは?」

「いいや。ノアは意識していないはずだ。ノアは不思議なぐらい純粋で、勇者スキルを己のために…悪意と敵意を持たずに使っていた。ノアも徐々に蝕まれていたはずなのだが、それが理由で侵食が遅かったのだろう」

「私は…魔王の…妃ですか」

 

 ドンッと机を叩き、立ち上がるセレス。


「なっ!? 何を馬鹿なことを言っている!? 魔王の正体は悪魔だぞ!? この地上から神が消えた今、魔王が覚醒する前に倒さなければ、誰一人として太刀打ちできなくなるのだぞ!!」


 片手でセレスを制して、座りなさいと目で合図するリリアナ。


「心配ありません」

「心配ないだと!? どういうことだ?」

「レイナルド…は、心と魂が完全に侵食される前に…死にます。肉体が持たないのです。勇者スキルや魔王スキルに、耐えられる器ではなかったのです」


 リリアナは、レイナルドの心と魂が何者かに侵食されていることに気が付いていた。そして、肉体も深刻なダメージを受けていたことも。


「なんてことだ…」

「一週間だけでいいです。私に時間をください。私は…残された時間を共に過ごしたいのです」

「約束は出来ない。魔王の波動が強まれば、俺は…兄を…」


 二人の茶会に割って入る来る者がいた。


 レイナルド皇帝から重大な話があり、大至急玉座に来るようにと伝令が来たのだ。


「なにかしら?」

「わからん。だが、油断するなよ」


 リリアナは、何があろうとも、このお腹に生まれた小さな命を守らなければならないと誓ったのだ。


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