第180話 セレスティーヌ・ヴェラー編
これはエフェルフィーレが、ジュディッタ、タムリン、リオニーと出会う前の話し。
ヴァルプルギスの夜会での出来事、リーダーから命令が下された。
くっ。英雄スキルの効果だと…。わ、私を…男が支配するなんて…。
ヴェラー領地を治めるエドヴァルド・ヴェラーの愛娘として有名なセレスティーヌ・ヴェラー。有名なのは父親の権力によるものだけではない。魔物と使い魔における研究の第一人者とされる人物である。そして、裏の顔は、ヴァルプルギスの夜会のメンバーでもある。
「リオニー…妹のクリスティーナ…を探せですって!?」
クリスティーナは、【名匠】スキルを持つヒノデリカを連れ去り、世界中を逃げ回っているのだ。また【名匠】スキルは、勇者スキルや英雄スキルにも負けず劣らずの性能を秘めている。
クリスティーナならば、養子の娘を溺愛する…同じヴァルプルギスの夜会メンバーである異端審問官ディオン・シュルツに命令すれば良いのではないか!!
口には出さないが、異端審問官ディオンを一瞥する。
「我が命令に不服か? セレスティーヌよ」
「いいえ、そのようなことは…」
「異端審問官ディオンには、他の頼みごとがある。褒美としてだな…。全てが終わった後に、お前を アンブロス王国の女王に…と考えておる」
「な、何と!?」
「どうだ? 少しはやる気が出ただろう?」
領地だけを見れば、帝国などよりも広大で豊かな土地を持つアンブロス王国。
理解っているではないか。このセレスティーヌ・ヴェラーの価値を!!
「仰せの通りに。必ずや、リオニーを拘束して連れてまいります」
しかし、何故、ヒノデリカを捕まえろと言わないのだろうか?
「いや、少しばかり説明が必用か。リオニーは殺しても構わん。作れ来るべきは、行動を共にしているヒノデリカという鍛冶職人だ」
血が繋がっていても家族として過ごした時間が少なく家族としての認識が気薄だとしても、妹の命を…何だと思っている!!
私以上に、娘を溺愛する異端審問官ディオン・シュルツの殺意が漏れていた。
「我が手を煩わせるではない。お前らでは、英雄スキルを持つ我に傷一つ付けられぬ」
「では、私は、捜索に向かいます」
席を立ちリーダーに背を向けるセレスティーヌは微笑んだ。
このままリオニーを見つければ、褒美としてアンブロス王国は、私のもの。しかし、褒美など…送られる立場に甘んじる私ではない。
その【名匠】スキルを持つヒノデリカを連れ去り、私が…スキルウォーズにおける第三の勢力になるのですから…。
そう言えば、ノアが生きていたと言っていたわね?
リオニーとヒノデリカという駒がいれば、ノアは従順に…私の駒になるのでは? いえ、ノアどころか、異端審問官も…あるいは…。
少しでも戦力は多い方が良い。あら、何だか楽しくなってきたわね。