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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
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第176話 エフェルフィーレ編

 商業都市サナーセルでも有名なBランク冒険者のエフェルフィーレも、そろそろ引退を考える年齢に近づいてきた。


 生涯独身を貫けば、まだ余裕ある。しかし、結婚して子供が欲しい。

 孤独な長い夜に心を折られたのである。


 そんなとき、異端審問官ディオン・シュルツから指名依頼が来た。


 娘であるリオニーを探して欲しいと。


 リオニーの捜索の足しにと出生の情報を知る。セレスティーヌ・ヴェラーの実の妹で、シュルツ家の養子になった。

 異端審問官の若きエースとして名高いリオニーの過去に惹かれたのか、ノアの友人であったためか、冒険者最後の依頼として、エフェルフィーレは、受諾した。

 だが、4年前に失踪した者を探す旅は、そう簡単なものではない。


 異端審問官の情報網を使ってもわからないのかと尋ねたのだが、「公私混同は出来ない。それ故、冒険者を雇った」と言われてしまった。


「何の手がかりもないまま、この広い世界から、たった一人の人間を探せと?」

「各国の大きな街には…異端審問官たちがいる。つまり、そういう場所にはいないだろう」


 余計に面倒だ。しかし、街で生まれ育った人間が、人間社会から完全に離れて暮らすことは難しい。


 あてもなく街から街へ聞き込み調査をする放浪の旅が始まった。旅に出て二年近くたったとき、ペラルタ王国の小さな酒場で、少女が大きな鎌を持って魔物と戦っていたという情報を手に入れた。また二人組で行動しているという情報も手に入れた。


「恐らく、異端審問官の鎌だ」


 だが、その現場から何処へ向かったかまでは、誰も知らなかった。しかし、エフェルフィーレは、リオニーが戦ったと思われる現場を見つけた。


 そこは森の中。茂みに囲まれた大きな広場。普通に考えれば、開けた場所を歩くはず。冒険者の直感に従い一つの道を進む。


 そして、辿り着いたキルスティ共和国の深い森の中。


 異端審問官ディオン・シュルツとのやり取りによれば、二人組の一人はヒノデリカという少女らしい。


「大量の出血!? しかも…まだ乾いていない。馬の蹄…。複数の人の足跡…。この形と地面へのめり込み方は騎士のブーツ…」


 エフェルフィーレは走り出す。森から街道に出る。


「どっちだ。どっちに…」


 慎重に森から続く蹄の跡を観察する。まだ新し蹄の跡は、しっかりと方向を示していた。


 ハァッ、ハァッ、ハァッ…。


 体力も…全盛期と比べて随分と落ちたものだ。エフェルフィーレは苦笑いする。


 やがて日が沈み周囲が暗くなり始めて気が付く。進行方向が夕日のように明るい。そして、丘に差し掛かった時、停泊していた馬車の扉の隙間から見えた人影は、タムリンとリオニーであった。


 ノアを助けたあの日、一度見ただけだが、今でもしっかりと二人の顔は覚えていた。


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