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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
175/243

第175話 リリアナ編

 皇位継承第4位のセレスティノ・ヘルメスベルガーに離宮へ閉じ込められて1年が経過した。皇太子レイナルドの妃となるべく教育を受けるためだ。


 しかし、ここに来て1年も経つというのに、一度も皇太子レイナルドは姿を見せなかった。


「興味がないだと? 馬鹿を言え、寧ろ兄は、リリアナが妃として相応しい女性になることを、毎日のように俺に聞いて来るのだぞ。本当に心待ちにしている」


 信じるしか…ないのか。


 離宮の監視塔からから宮殿の中庭を通る皇太子レイナルドの姿を一度だけ見たことがある。会ったことも話したこともない男性と…結ばれる…。


 孤児院で育った私は、周囲の支援のおかげで、自称見習いの魔女として生活をスタートさせた。そのまま行けば、恋愛をして…結婚して…子供を産んで…普通の生活が待っていたのだろう。


 正直に言えば、私は、皇太子と初代皇帝の正当な血を混ぜた子供を産むための器なのだ。


 だけど、愛されたいとか、恋愛したいとか、そんな事よりも、帝国の歴史を…一般人が知らない歴史を…学べば学ぶほど、その醜い争いの中で、必死に生き、誰かを救うために犠牲になった…そんな人たちの願いの果てに自分があると知ると、その者たちの悲願を叶えたいと…思ってしまったのだ。


『週一で、リリアナと文通するから。隕石鷹(メテオホーク)のエドヴァルドが、ノアのところに来なかったら、帝都を不死鳥(フェニックス)のエドゥアールで焼き尽くすからね』


 私を送り出すときに、師匠がセレスに行った言葉。今でも、ちゃんと文通で師匠と繋がっている。それだけで凄く安心できた。


 師匠に移り行く心情を手紙に添えて語りかけると、師匠から送られてくる手紙に涙の跡があったりする。


 帝国の進んでいる道は、悪の道かも知れない。でも、それでも。その歴史と土地の上に、人々の過去と現在と未来があるのだ。


『それと質問があります。リリアナが、国で一番の権力と武力を持ったとして、何をしたいですか?』


 今でも思う。師匠の言葉には、もっと遠くの未来が隠されているんじゃないかと。

 

 リリアナが挫けず花嫁修業をしていると、セレスが勢い良く部屋に入ってきた。


「リリアナ! 遂に皇位継承が決まった。しばらくは皇位継承式典に向けて準備で多忙になるが、リリアナもしっかりと自分の事に集中して欲しい。その後は、大々的に妃の選別を発表して、いよいよロイヤルウェディングだぞ!!」


 後何年後の話なのだろう?


 そして、季節は巡り…結婚式当日。


 開かれた帝国を目指すレイナルド皇帝の案により、帝都の中央広場全体を使って挙式が行われる。どの様な身分の市民であれ、この挙式を見る事が出来るのだ。


 中央広場の巨大な噴水で待つレイナルド皇帝の下へ、太陽の光を纏ったよなウェディングドレスを着た花嫁であるリリアナが、周囲の大歓声の浴びながら、ゆっくりとヴァージンロードを歩く。12歳という少女なのだが、初代皇帝の正当な血を受け継ぐという理由から、吟遊詩人たちもある詩ない詩を作り上げ、帝都は花嫁と皇帝の再会に酔いしれていた。


 リリアナの視界にはっきりと、レイナルド皇帝の顔が見え始めた。師匠、本当に…これで…よかったのでしょうか? 

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