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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第五部 その手から零れ落ちるもの
173/243

第173話 ノア編 

 何故、ノアが子供たちに囲まれているのか?


 それはジュディッタと別れたノアは、ヴォルフたちと再会して、「いい加減、自分のための人生を歩みなさい」と、大説教を食らったからなのです。


 そして、ノアは真剣に考えました。ノアが…やりたいことを。


 いろんな柵やこだわりを捨てると、リリアナやジュディッタのように誰かの将来を応援したいという気持ちと、使い魔の研究に没頭したいという気持ちが残ったのです。


 ノアは、安住の地を求めて各地を周りながら、偶然知り合った孤児や奴隷たちと一緒に、このトゥリーナ島に辿り着いたのです。


 ノアはハンターで手に入れた資金を惜しげもなく投資し、孤児院と使い魔研究所を設立したのです。


 リッチャルディ諸島のような辺境の地まで、魔物を討伐しに来る冒険者やハンターがいないため、魔物の被害も犠牲も目を瞑るしか無かった島民たちはノアを歓迎しました。


 また孤児院の子供たちは、街の仕事を無償で手伝っているのです。ノアに言わせれば、仕事を無料で教えてもらってるのに、お金などもらえない。そんなスタンスが孤児院の子供と街の住民との距離を縮めていた。


 ノアの使い魔達は、何れも規格外の魔物ばかりで、街を住みやすくするためならば、島の地形が変わる程度は当たり前となっていたため、ノアが多少…使い魔の実験で無茶をしても誰も気にしないのだ。


 次々と島を改革していくノアに、街の市民どころか島民全体が、驚くことも多々あった。


 孤児院の隣に学校を作り、授業料無料、食事無料、宿舎無料として、リッチャルディ諸島全体の子供たちを対象としたのです。子供を労働力としていた家庭には、無償で奴隷を貸し出す徹底ぶり。


 奴隷も重労働だが鉱山奴隷とは比べられない程の高待遇で、労働の姿勢と年数により奴隷を解放すると宣言されていた。また解放の際は、犯罪に手を染めないことを契約魔法で行動を制限するし、街の住民として迎え入れる準備もしていた。元々真面目に働く者に寛容な島民たちだ。誰も文句は言わなかった。


 リッチャルディ諸島全体が緩やかに豊かになり始めると、それを狙う海賊たちが出没し始めた。元々、リッチャルディ諸島と大陸を行き来する船舶はないのだが、上陸して小さな島の村を襲撃する事件が発生した。


 ジュディッタの前例があるが、やはりノアは海賊行為が許せなかった。各島の長老たちの許可を得て、ノアは海賊狩りに四大精霊を派遣し一掃した。


 その後も、空に不死鳥(フェニックス)のエドゥアール、海中に海王魚(レヴィアタン)のツェツィーリエ、海上に暴風霊(ウムダブルチュ)のクローイ、島の中央に塔魔神(ティタン)のバルトルトを放ち、やがてリッチャルディ諸島全体は間の領域と呼ばれ、誰も立ち入らなくなった。


 住民たちも、リッチャルディ諸島のどの島からも見える空の雲を突き抜ける塔魔神(ティタン)の姿や、夜空を流星のように飛ぶ不死鳥(フェニックス)の姿は、当たり前の日常となっている。


 リッチャルディ諸島に暮らすみんなの笑顔が、ノアは好きだった。だけど、ノアには、ノアならではの悩みがる。


 18歳になった夜。ノアは、猫亜人(ゴロゴロニャー)のアネッテと、孤児院の屋根にいた。ノアは衣服を全て脱ぎ裸になる。


「ぷっ。ノア、全然変わらない。貧相な体」

「ムッキー!! 頭の栄養が全部、乳に言った馬鹿猫に言われてくありません!!」


 ほっぺたをぷっくりと膨らませながら、ノアは左腕の七色に輝く精霊義手(エレメンタルアーム)を月に向けた。


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