第171話
一人目のタムリンが、ノアを二人目のタムリンの器だと予知していたのか、ノアを救うためのタムリンと認識していたのか、何が何だかわからないが、兎に角タムリンは…生きている…。
世界の声を聞き続け、死んだはずのノアが生存していること、三人目タムリンという偽物がいることを知ったレナータ。
世界の叡智を振りかざし、世界の理から外れた世界から帰還する。
「神にさえ届く力の持ち主が多すぎるわ。なぜこんなことに…。異端審問官たちは何をしていたのか…」
レナータは、運命の糸が醜く絡み合ってしまい歪んでしまった世界を解放するため、小さな一歩から始めることにした。
「だけど、最後は、ノアが決めることなんだよ」
レナータは小さな男の子に化けると、盗賊団に捕まり、ジュディッタという少女に世界の本当の姿を教えた。
それはノアとジュディッタが出会う前の話し。
しかし、既にノアは、またしても逃げられぬ運命に知らず知らずに囚われていた。
これが後にノア・デモニウム・プリンセプスが語る三大苦難の三つ目にして、最大最後の苦難の始まりである。
◆◇◇◇◇
キルスティ共和国の深い森の中。
「……」
声を失っているヒノデリカは、血まみれのリオニーを抱き締め、必死に叫んでいた。
その声にならない叫びは、街道を馬車で移動していた『真神タムリン教会』という爆発的に勢力を拡大している新興宗教の聖女ジュディッタの耳に届いた。
ジュディッタは、護衛の馬に飛び乗ると、深い森を自分の庭のように案内し、血まみれのリオニーを発見した。
癒やしの魔法を発動するジュディッタは、心臓が高鳴る。
ずっと…心に刺さった棘が抜けたように、壊れていた歯車が噛み合うように、世界が動き出したことを感じ取った。
すると、世界のときが止まる。
タムリン様からの啓示により…知らされたのだ。
『その者たちは運命の天秤を動かす…小さな小さな分銅ですが、その者たちの扱いを誤れば世界は崩壊してしまうでしょう』
また世界は動き出した。
こんなとき…ノアお姉ちゃんがいてくれたら…。
ジュディッタが二人を馬車に乗せ、大好きな小さな都市バルテが一望できる丘に差し掛かった時、真っ赤に燃え上がる街が目に入ったのだ。
第四部 完です!!
第五部は、最後部となります。(章にしおけばよかったな)
国や組織が入り乱れる戦いが始まり、やがて世界は終焉に向かうのですが、
ノアが活躍するのか、しないのか、それは知りません。