第162話
「ノア! 喧嘩上等!?」
「勿論です。相手が誰であろうと、自分たちの勝手なルールで、自分たちの都合の良い解釈で、自分たちの方が偉いと思っている馬鹿な連中の世界観に、付き合ってあげる必用はありません!!」
灰狼侍のアウギュスタと、冬狐姫のカルメンシータも己の魔力を解放し、本気モードだ!!
「お、おい、不味いって…相手は聖女だろ?」
リリアナの教育係であるBランク冒険者のエーベルハルトは慌てふためく。
「この聖女サトゥルニナ・レーヴェンヒェルムに刃を向けるなど、万死に値しますとか…言いませんよ!? ノア…勝手に盛り上がらないで。折角、逢えたんだから、そんな敵を見るよな目で見ないで!! ほら、ここは人目とか…あるし、神殿に来ない?」
「お断りします。ノアは、お祭りを楽しんでいるのです。邪魔しないでください」
「狡い!! わ、私も一緒に楽しみます!!」
「し、師匠…この人、本当に聖女様ですか? 聖女様のイメージが絶賛崩壊中です…」
自分の失言に聖女の親衛隊が反応してしまい恐怖のあまり、ノアの背中に隠れるリリアナ。
「ほら、そんなゴツいのが回りにいたら、お祭りの気分じゃなくなります。それに、今日は忙しいのでは?」
「もう式典は終わりました。だからノアに会いに来たのです。リオニー、ヒノデリカ、タムリンの事を聞きたくないのですか?」
狡い!! 聖女は、ひ、卑怯者です!!
どうだぁ? と、言わんばかりの聖女の顔が憎たらしい。
「わ、わかりました。少しだけですよ…」
すると、また面倒な人が…。
「ノア! なんだ…その格好は!?」
聖女が特攻服にツッコまなかったのに、皇位継承第4位のセレスティノ・ヘルメスベルガーは、ツッコミますか?
聖女様とヘルメスベルガー第四皇子の登場により、メインストリートの一角から、人々が消えた。二人に面識があるらしく、しばらく、二人の社交辞令を観察する。
しかし、セレスも行動が早いですね。昨日の今日ですよ!? まだリリアナには伝えてないし…。どうしよう…。あっ! セレスから言ってもらおう!! その方が、リリアナも納得するし…ノアが怒られたりしないはず!!
「師匠、あの方は?」
「おい…ノア。お前、あの方は、ヘルメスベルガー第四皇子様だよな?」
「第四皇子様!?」
リリアナは酷く驚いているが、あんたも初代皇帝の血を引く王女様なんだよ…いや、妃になるかもなんだよ! とは、突っ込めなかった。
「…と言うわけだ。ノア、神殿に行くぞ」
はいはい。最強さんの登場です。しかし、ノアの背後にいきなり登場したのですが? しかも近衛騎士団まで連れて…あの密集した人混みの中に転移してきたとか、どんだけチートなんですかね…。いや、勝てませんよ?
喧嘩上等が…泣いていますね…。