第158話
「もういい! ノアぁ…様が、こでぃん的にぃ…助けてぇ…やる…。ばそはどごだぁ?」
「本当か!? で、でも…そんな酔っ払ってて…」
「だいどうぶぅ!! はやぐいえ!」
「街の北、元盗賊たちのアジトに…住み着いた緑豚兵の討伐だった…」
「ほらぁ、アネッテぇ、おんぶ、おんぶ」
「えーっ。面倒だけどっ!?」
「お、俺も…連れてってくれ!!」
2時間後。元盗賊のアジト周辺…。ノアは猫亜人のアネッテから下り、少し離れた所で地面に蹲って、既に胃の中が空なのに、吐き続けていた。原因としては、ノアの飲みすぎなのだが、アネッテもノアの酔いが回るように、わざと跳ね回りながら走っていたのだ。
「アネッテ…め…」
恨めしそうにノアがアネッテたちの場所に戻る。
「ノア。誤解だよ。ほら、吐いてお酒抜けたでしょ?」
まぁ、確かにそうですけど? そのおかげとは、口が裂けてもアネッテには言わないが、【特定】スキルで、この子供に対する不審点が浮かび上がる。
怖がってない? 兄を助けたい気持ちが勝ってるから? いや、緊張してるのかな? でも…悪意があるな…。
「えっと、名前なんだっけ?」
「お、俺はバート」
「うん、バートは、ここで待っててね。人質奪還だとバレると、人質を盾に使われるからさ」
「え、でも…」
白浮霊のフェールケティルを呼び出し、精神操作でバートを眠らせる。
「ノア? 緑豚兵が人質を使うの?」
「ううん。アジトにいるのは、全員人間だよ。それも…ノアに悪意を持った人間がね」
「それって…このガキを使って、ノアをおびき出したってこと?」
「正解です!!」
「どうするの?」
「どうしましょう? そもそも今回の正解って何? 犯行を計画した主犯を捕まえて依頼主を探すこと? このまま帰ること? 皆殺しにすること? 何にしても、ノア達の正当性が…あっ! 思いつきました!!」
ノアは、アネッテにバーンを背をわせると、使い魔たちと手を繋ぎ【隠密】スキルを発動する。
「このまま敵陣地へ行って、ノアたちへ何をしたかったのか、探りを入れてみましょう!」
「えーっ。だるいなぁ…」
「だって、ほぼ満員の酒場で…見られているからね…面倒だからって、殺すだけじゃ…」
「うーんと、冒険者ギルドで緑豚兵がアジトにいるのは立証済みだから、アジトに行ったけど、全員殺されていたというのは? で、緑豚兵は逃げてたみたいな…。全員殺した後にガキを起こして、遅かって的なやつでいいじゃない?」
「おぉ!? どうしたアネッテ! 冴えまくりじゃないですか!!」
「ふっふっふ。遂にアネッテの時代がきましたね!!」
「では、アネッテ!! 全員ぶち転がして来て!! 背後に誰がいるとか聞かなくて良いからね」
「はぁ〜い!」
背後に誰がいようと、尻尾を掴むのに時間がかかり過ぎて面倒なのです。
猫亜人のアネッテは、進化していないのに灰狼侍のアウギュスタに足元に届きそうな強さなのです。恐らく今頃は、ドヤ顔で登場して、猫つえぇぇぇでもしてるのでしょう。
アネッテが帰ってきたので、バーンを起こして、兄を救えなかった演技を開始する二人でした。




