第156話
「…なるほど、そのヒガシヤマという人物が語る日本という世界は、私の記憶にある不思議な世界と合致する。この膨大なスキルポイントは、神からの贈り物だったのか…。しかし、そのヒガシヤマと同じく、私も何か目的を達成すれば、日本に帰れるのだろうか? 確かヒガシヤマは、『誰かを救い』そして『生きる意味』を手に入れたから…だったね。しかし、俺は…全く記憶にないんだ」
現時点で話せること出し尽くしたノアとセレスは、一旦別れることにした。
「では、ノアは…まだ飲み足りないので」
「ノア、あの酩酊状態は不味いぞ。貞操の危機じゃないか?」
「ははっ…」
笑って誤魔化し、ノアはその場を離れた。
しかし、軽い気持ちで祭りを見に来ただけなのに、帝国の闇に足を突っ込んでしまったな。これでは、アンブロス王国に帰っても変わらなくない? マーシャルさんにも会いたいし。
「ノア! 酷い!! アネッテを閉じ込めておいて、あの男と何をしてたの!?」
「話してただけです! 勝手な妄想は禁止です!」
猫亜人のアネッテを呼び出すと、質問攻めに合う。呼ばなければよかった。
それでもアネッテはノアと腕を組んで歩く。最近はリリアナばかりだけど、アネッテも可愛い妹だ。
しかし、そんな楽しい気分だったのに、いつもの酒場に向かう途中で、盗賊と遭遇する。ここは天下の大通りだぞ? そんなに堂々と? しかし…アネッテも…。
「こ、殺さないでくれぇ!! ぐばぁっ!?」
容赦なく盗賊をバラバラにしたアネッテ。
「アネッテって、本当に弱いやつには強いよね…。これだけの野次馬がいるのに…」
この遺体は誰が回収するのか? と、疑問に思いながらも、いつもの酒場に到着すると。
「へっ? 貸し切り? なんで? 結婚式!? 酒場で!?」
乱入しようかと考えましたが、トラブル発生が目に見えていたので、別の酒場へ行くことにしたノア。しかし、ここと冒険者ギルド一階の酒場しかしらなかった。
「アネッテ。冒険者ギルドでのトラブル発生確率と、結婚式に乱入してのトラブル発生確率は、どちらが高いと思う?」
「知らないけど、冒険者ギルドがいいな。だって、結婚式で誰かをぶち殺したら…なんか…ね」
なるほど。一理あるね。
冒険者ギルドが運営する酒場は、当たり前だが冒険者だらけだ。
「席も…埋まってるね…。もうカウンターにしようかな」
ノアがテクテクと歩き出した時、急に腕を引っ張られてた。あれ? 【特定】スキルに反応しないということは…悪意ではない? しかし、見ず知らずの男に体を触られるのは殺意が芽生える。善意でも…こういう事があるのか。勉強になった。
「えっと、何か御用ですか?」
「お前、ハンターのノアだろ? こっちで飲もうぜ!! ハンターの話しを聞かせてくれよ。俺達もハンターへの転職を考えてんだ」
「何をぼーっと立ってるんですか!? 早く座って」
ペンペンと長椅子を叩くアネッテ。アネッテっめ…。
わざとトラブルを発生させる気ですね!?