第154話
ホテルの部屋を出たあたりから、強烈な干渉がノアを襲う。不快です!!
我慢の限界に達したノアは、【特定】スキルを発動させた。そして、振り向くと同時に臨戦態勢に入る。
こんな強者に背中を向けていたなんて…背筋に冷たい汗をかく。しかし、冬狐姫のカルメンシータと灰狼侍のアウギュスタを置いてきたのは、失敗でしたか…。いや、リリアナから、こいつを遠ざけることができて正解だったかも。
ノアの変化に、猫亜人のアネッテも腑抜けた表情から戦士の顔に変わる。
金髪に青い瞳…装備は…高級品ばかり…何者ですか!?
通りには往来する人が、ある程度いた。ここで…狙ってくる? という事は、目に見えない攻撃が来る可能性がある…。
「ま、待ってくれ…。て、敵意はない! き、君と…話しがしたいだけだ!!」
確かに敵意はないけど…。青年と言うよりも少年という感じだが、容姿に騙されてはいけない。
「ノアには、ありません。それに…ノアから離れてもらえませんか? あなたの強さは異常です」
少年は驚き、剣を地面に置いた。
「こ、これで良いだろう?」
「駄目です。あなたは一瞬で剣を拾いノアの喉元に突きつけれる…そんな実力の持ち主です。剣を置いた行為に意味がありません」
「では…一体、どうすれば…」
「そうですね…裸で…いや、危険なのは…あなた自身ですから…。まぁ、もう良いです。あなたがノアを殺そうとした場合、最低でも3,000m離れていなければ、ノアにはどうすることも出来ないでしょう」
ランクCにランクアップした【看破】スキルにより、接触なしでも相手の情報が読み取れるノア。
「君は…一体…何者なんだ!?」
「一応…女の子なのですが。先に名を名乗らせるのですか? 皇位継承第4位のセレスティノ・ヘルメスベルガー様。そして、お話しとは…このネックレスの事でしょうか?」
「何もかもお見通しなのだな…。この通り、頼む…話しをさせてくれ」
素直に頭を下げた皇位継承第4位に驚くノア。権力や武力に屈しないと誓ったノアだが、相手が悪すぎた。これ程の圧倒的な力の差を感じたのは…ヒガシヤマさんだけ…。もしかしたら?
ノアとヘルメスベルガー様は、小さな小料理店に入ると、大金を出して店を貸し切った。
「先程は失礼した。改めて名乗ろう。皇位継承第4位のセレスティノ・ヘルメスベルガーだ。この場ではセレスと呼んでくれ」
「ご丁寧に。私は、ノア・デモニウム・プリンセプスと申します」
「先程から…ノアという名に聞き覚えがあってだな…」
しばらく考え込む。
「もしや…。君は…。勇者スキルを保持していた…ノアか? それだけの高ランクのスキルを…あっ。失礼した…」
「良いのです。ノアもセレスを勝手に覗き見しましたから、セレスの立場なら相手を調べることは当たり前でしょうからね。セレスは、過去のノアと今のノアを結びつけた…最初の人になります。それで、ノアとわかった今、セレスはどうしますか? 殺しますか? 捕縛しますか?」
「いや…。何て言えば…。その件も詳細は知らされていない。夜は長い。お互い…誤解がないように、親睦を深めたいと思う」