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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第四部 天の邪鬼な酩酊少女
152/243

第152話

第152話の前に間違って、第153話を投稿してしまいました。


第153話を削除して、本第152話を投稿しましたご注意ください。

 ホテルへ帰ると身なりの良い青年が待っていた。


 青年は二人きりの会話を望んだため、リリアナに護衛が必用になる。冬狐姫(ヒエムスクィーン)のカルメンシータと灰狼侍(サムライウルフ)のアウギュスタを割り当てるべきなのだが、暗殺者の確保に向かわせているため、リリアナと別行動が出来ない。そのため青年をノアの部屋に入れることにした。


「突然の訪問にもかかわらず、話を聞いて頂けることを感謝します。私はフランセル家に執事として仕える父カシュパルの息子ヨナターンと申します。どうか…粛清から手を引いて頂きたい」


 うわっ、貴族の関係者にしてはストレートだな…。


「ノアは粛清に関係ありません。相手の情報操作に惑わされず、きちんと調査すべきです。自由都市ルドワイヤンに来て一週間も経たないノアが、会ったこともないフランセル家の粛清に参加するのでしょうか? そのために来たと言われても、粛清してノアに何の得があるのですか? そもそもノアというハンターが魔物討伐以外の依頼を受けることはないのです。おわかりですか?」

「そ、それは…本当でしょうか?」

「はぁ。ノアが本当だと言ったら、それで信じるのですか? 疑っていたからここに来たのでしょう? 先程のアドバイスを聞いていましたか? 大切なのでもう一度言いますよ。相手の情報操作に惑わされず、きちんと調査すべきです!! 自分でしっかりと裏を取ってください。そもそも、フランセル家が粛清される理由はなんですか?」

「それが…エモン男爵家の使用人が殺されたのですが、その現場に…フランセル家の紋章入りの短剣が落ちていたのです」

「それだけ? 短剣って簡単に盗めるのですか? 在庫とか保有数は?」

「いえ…それが…。通常、紋章と本物だと証明する魔術がセットなのですが…フランセル家には…魔術を行使できるほどの余裕がなく…ある程度の職人であれば、紋章入りの短剣は作りたい放題でした」

「十中八九犯人はエモン男爵家でしょう。でも、ノアがフランセル家の粛清に参加しないように、フランセル家を助けることもありません。ノアは政治や権力に関わることはないのです」


 ヨナターンは非礼を詫て退室する。そこにリリアナが近づいてきた。


「無駄ですよ。ノアは何があろうと関わりません。リリアナは他人の心配より、自分の魔術の向上を優先させてください」

「ノアの言う通りだ。エモン男爵家は裏で闇組織と繋がっているという噂だ。関わらない方が良い。噂ついでだが、街の酒場の噂では、エモン男爵家は、フランセル家が所有する山を狙っているらしい。どうもその山には大量の鉄鉱石が眠っているらしい」

「でも…あの方は…。私が直接受け取っていたわけではないので、間違っているかも知れませんが、毎年…孤児院に寄付してくださっていた紳士の隣りにいた人ではないかと…」


 エーベルハルトは、リリアナの肩に手を置く。


「人を助けるのは簡単じゃない。特に闇組織の場合、相手の全容が掴めないからな。戦っていても疲弊し消耗するのは、こっちだ。相手もソレを狙っている。強さにはいろんな強さがあるんだ」


 ◆◇◇◇◇


 暗殺者をぶち殺してきたカルメンシータとのアウギュスタをリリアナの護衛に付けてホテルを出る。


「さて、少し真面目に、この自由都市ルドワイヤンの光と影をお勉強して来ましょうか?」

「とか言って、お酒飲みたいだでしょ?」

「違うから!!」

「それか、リリアナの悲しい顔に、胸がキュンってなっちゃったとか?」

「…」

「まじかっ!! 当たっちゃったけど!?」

「う、煩いですよ!? ノ、ノアをからかうんだったら、ホテルに帰ってください!!」

「あーっ。怒らない、怒らない。さぁ、美味しいお酒が待っていますよ!!」


 ノアが動けば、ホテルを囲んでいた各勢力にも動きがある。ノアを追いかける集団と、ホテルを監視する集団だ。


 しかし、ノアは懐かしんだ。あの頃とは違うんですよと。


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