第151話
「見なさい。これがお前の師であるノア・デモニウム・プリンセプスの力の片鱗だ。リリアナお前は、これを越えなさい。それが師からの命令であり願いだ」
ヒガシヤマさんの家にあったダンジョンの最下層で【支配】をランクSを手に入れたノアは、完全に不死鳥を支配下に置いていた。
鉄をも溶かす高熱のため、不死鳥は、遥か上空に召喚して、自由都市ルドワイヤンの街中からでも十分に視認できる高さで旋回している。それでも焼けるように熱い風が地表を撫でる。
エーベルハルトとリリアナは、言葉を失っていた。
ノアはエドゥアールに御礼の言葉をかけ封印すると、リリアナを抱きしめる。
「信じてください…」
◆◇◇◇◇
街に帰ると、大パニックなっていた。
「自由都市ルドワイヤン始まって依頼の危機だ!!」
「伝説級!? いや、厄災級!?」
「誰が、あんなもの討伐できるというのだ!!」
「祭りどころじゃねー!!」
「逃げろ!!」
我関せずというスタンスで街を平然と歩くノアに、エーベルハルトは小声で話しかける。
「どうするんだよ? 間違いなく不死鳥の所為だよな? 街が滅茶苦茶になってんぞ?」
「放っておきましょう。そのうち忘れますって」
魔力が枯渇して歩けないリリアナを猫亜人のアネッテが背負う。リリアナは肩に乗る隕石鷹のエドヴァルドの囀りを聞きながら、不死鳥との脅威の差があまりにもあり、何だか笑いが込み上げてきた。
「師匠って、本当に凄いんですね」
「ノアは、アネッテの村も救ってくれたんだよ。あの頃は…ノアも…良い子だった…ぐふっっ!?」
ノアのパンチがアネッテの腹部にクリティカルヒットするが、リリアナを落としてはいけないと必死に踏ん張る。
「一言多いのです…と、【結界】!!」
キンッ! キンッ! と、ダガーが結界に弾かれ地面に落ちた。
「混乱する街に紛れて暗殺とか、やることがせこいですね。カルメンシータ、アウギュスタ捕まえてきなさい」
リリアナは震える声で師匠に尋ねた。
「い、今の…わ、私を…狙って…いましたよ…ね?」
「どうだろう? アネッテにパンチとかしてたし…誰を狙ったかは微妙だね…」
ご、誤魔化しきれない!? 前回の盗賊も服毒自殺してしまったし…盗賊が命をかけるなんてありえないし、誰かに精神レベルで操られている可能性が高い。今回は、暗殺者っぽいし…なおさら生け捕りは難しいだろうな…。