第149話
お買い物はノアがグズって中止になった。ノアは泣き続けて疲れたのか、ベッドの上で寝ている。
「はぁ…。師匠に嫌われたかも…」
「それはない。だって、ノアは覚えてないよ?」
「本当ですか!? よ、よかったぁ…。でも、師匠って、14歳ですよね。少し…同年代と比べて、体が小さくないですか?」
「うーん…。そう言われても、猫亜人のアネッテには、わからないな…」
「そうですか…。アネッテは師匠との付き合いは長いのですか?」
「うん? 一年ちょっとじゃない? なんで?」
「師匠って…たまに…凄い体験をしてきたんじゃないかって…そう思ったのです」
「本人に聞いてみれば? 教えてくれなくても、お酒飲ませれば、何でも話すぞ」
「お酒が自白剤!?」
そのとき、ノアが起き上がる。
「あれ? 頭が痛い…。そして…気持ち悪い…。ノアは…一体…どうしたんだ? うん? リリアナ…その薬を持ってきたということは…ノア…もしかして、お酒を? 朝から?」
「そうですよ。師匠。リリアナのお買い物を忘れて、お酒をガブガブと…」
「うっ…。ほ、本当ですか!? 約束を破るなんて…本当にごめんなさい…」
「今度から、お酒には注意してくださいね」
体調が整うまでノアはベッドの上でぼーっとするが、どうにもスッキリしないので、お風呂に入ることにした。
「アネッテ。お風呂に入りたい」
「うん。入れば?」
「…そう…。じゃ、カルメンシータに入れてもらおうかな。アネッテが、入れてくれないって文句を言いながら…」
アネッテは、颯爽とノアを抱きかかえると、バスルームへ突入する。そして、しばらくしてから、真っ裸で出て来たノアを見てリリアナは驚く。
「し、師匠!? その左腕は!?」
「あっ。これ? 体内の精霊力を活性化させると、擬態していた皮膚が解除されて…」
「よく解りませんが、とりあえず…下着を…」
◆◇◇◇◇
冒険者ギルドで、リリアナの先生になる人物と面会した。
「俺がBランク冒険者のエーベルハルトだ。スキルは、魔術がC、魔法B、魔導Cになる」
ほぇ〜。白髪混じりの中年冒険者だ。場数を踏んでいるのが表情から見て取れる。【特定】スキルでも悪意は感じない。
「ノアです。こっちの猫亜人のアネッテはノアの使い魔で、こっちがエーベルハルトに担当してもらいたいリリアナです。ノアは魔法が使えませんので、詳しい話は当人同士でお願いします。それと、ノアの旅に合わせる形で、教育をお願いします。当面の予定ですが、ワールドバザーが終わるまでは自由都市ルドワイヤンに滞在する予定です。宿泊先は、ノアたちと同室ですが、一応ベッドルームは別れています。それと…。リリアナは、ノアの目の届く範囲にいて欲しいので、訓練などで街の外に出る時は、一緒についていきます」
「問題ない。早速だが、魔法を見るため、街の外に出たい」
「あ、あの。はじめまして、リリアナと申します。これからよろしくお願いします」
「あぁ。こちらこそ。頼むぞ」
ノア達は、エーベルハルトと街の外に向かって歩き出す。
「ノアは、随分と敵が多いんだな」
エーベルハルトが、周囲の敵意を感知したのか、笑って話しかけてきた。




