第145話
怒り狂った黒飛竜は、尻尾を鞭のようにしならせ、強烈な一撃で、近づく灰狼侍のアウギュスタと、猫亜人のアネッテを牽制する。
アネッテは身の軽さを活かして、ヒョイッと尾をジャンプで躱したが、アウギュスタは踏み込んだ地面に足を取られてしまった。刀をクロスさせながら尻尾の直撃を受けて吹き飛ばされたが、運良く後ろにいた鉄巨兵のラヴレーンチェフにキャッチされる。
黒飛竜が翼を広げた。
「飛ばせるものですか!! 炎矢!!」
ノアは左腕の七色に輝く精霊義手を弓に変化させ、火傷をしないように結界で右手を覆い【炎術】により炎の矢を召喚する。【弓矢】スキルを発動させ、炎の矢を放つ。
月弓とは違い、矢にのみ力を注げるので、威力は段違いなのだが…。黒飛竜は回避しながら、上空へ飛び立った。
「空の敵は厄介でコン!!」
冬狐姫のカルメンシータは、右の翼を凍結させた。動きが鈍ったところに、鉄巨兵のラヴレーンチェフが、黒飛竜の足を掴む。
「そのまま!! 拙者が!!」
「残念!! たまにはアネッテが!!」
アネッテの【猫爪】により、黒飛竜の首が刎ねられた。
「す、凄い…これが…ハンターの戦い…」
リリアナは胸の前で両手を組み…祈るように戦いを見つめていたのだ。
その呟きを聞いていたノアは答える。
「一年後、リリアナも十分な戦力として一緒に戦えるよ。ちなみに…この報酬は、バルバストル金貨で650枚だよ」
ノアは小さな玉から出る導火線に【炎術】で着火する。「アウギュスタ!」を呼び、その玉を渡すと、アウギュスタは空高くへ投げる。
パァァァァァァンッ!! と、大きな音が上空で鳴り響く。
「師匠あれは?」
「うん? 信号弾。この近くにいる回収屋が、そのうち来るはずだ」
しばらくすると、バサバサと羽悪魔の集団がやってくる。指示書を渡し、黒飛竜の死体を指示すると、あっという間に解体して、遺体を持ち去ってしまった。
「何か、凄いの見ちゃいました…」
「料金は割高だけど、便利だよ」
「ノア! こっち来て〜。黒飛竜の赤ちゃんがいるけど、どうする? アウギュスタが食べたいって言ってた」
「ば、馬鹿な…拙者は…」
「う〜ん…。そうだなぁ…。食べちゃいなよ!」