第140話
結局、何度か頼み込みましたが、取り繕ってもらえませんでした。
「はぁ…。どうしよう…。もうお金もないし。いつまでも孤児院にいられないよ…」
トボトボと孤児院への近道の路地裏に入ったのが失敗でした。何でだか知りませんが、盗賊たちに囲まれていました。
「あの…私…孤児院出の貧乏人ですよ?」
盗賊たちは、何も答えない。ニヤニヤしながら…距離を縮めてきた。心臓がバクバクする。折れた箒の柄で作った杖を握りしめる。
「や、やめてください! あなた達は…誰ですか!」
このまま…恥辱の限りを味わい…娼婦として売られる…。何てつまらない人生だったんだろう…。
「何だよ。魔女じゃねーのかよ? 抵抗しないのか?」
「ギャハハッ!! 震えて、呪文が唱えられねーってか?」
違う…。人を傷つけるよな魔法を覚えてないだけ…。
背中に気配がすると、腰やら、腕やらを…押さえつけられる。
「とりあえず、中身を確認しねーとな」
盗賊がナイフを出す。服を切り裂くつもり…。駄目!! これは…みんなが…一生懸命お金を出して…作ってくれた…魔女の服…。怖くて、怖くて…声がもう…でない…。
しかし、ナイフを持った盗賊が…目の前でふっとんだ!? それは、猫亜人の少女が、殴りつけたからだと、すぐに…わかったのだが…何で? ここに…いるの?
猫亜人の少女は、相手の動きが全部理解っているみたいに、後ろにも目が付いているみたいに…。踊りながら戦っていた!?
私には、何が起こっているのか、よくわからない。でも…猫亜人の少女は、圧倒的だった。格好いい…。
そして、物凄く大きな…目つきの鋭い…両手に剣をもった…ムキムキのおじさんが現れた…。なになに!? 盗賊なんかよりも、もっと…凶悪な…最悪だ…間違いなく、殺される…。
「アネッテは魔女殿をノア様の下へ。あとは拙者が!!」
えっ!? 猫亜人の少女の仲間!? ノ、ノアさんに会えるの!?
地獄から天国へ返り咲いた私。今度は違う意味で、心臓がドキドキする…。
ノアさんは、ベッドの上でぐったりしながら、「あなた、薬と魔法で、治せるんでしょ?」と聞いてきた。
「は、はい! 治せます!!」
「じゃー、お願い…」
いきなり…何の疑いもなく、信用されてしまった!? しかし、これは…アピールチャンスです!!
携帯していた薬草と道具で、二日酔いの薬は簡単に作れた。ノアさんに飲んでもらい、私は、魔法で体にあるお酒を浄化していく。
ノアさんの体って…ハンターにしては…華奢なんだね。