表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第一部 使い魔店の看板娘
14/243

第14話

 ベッドの中に逃げ込んだ。手にはまだ緑吊し上げ花(ハンギングフラワー)の体液が付着していた。


 理屈は理解できるが気持ちが追いつかない。


 コンコンとドアをノックされるが無視してしまった。ドアが開き誰かが入って来た。卑怯にも【索敵】スキルを使う。タムリンだ。あんな酷いことを言ってしまった…。なんて謝れば良いのかわからない。


 毛布に潜り込むノアを撫で撫でするタムリン。本当は何か言いたいのかも知れないが、声を失ってしまったタムリンには撫でることしか出来ない…。これ以上、毛布にも潜るのは卑怯極まりない。


ガバッと毛布から出ると開口一番。「タムリン。ごめんなひゃい!?」


 タムリンは、ノアのほっぺたを思いっきり抓る。タムリンは怒っていた。


「いたひ、ひたい、いたぁぁ」


 両手でタムリンの腕を解こうとしたけど、びくともしない。ほっぺたが引き千切られる!? 痛くて怖くて、泣き叫んでいると、タムリンはパッと手を離す。


 タムリンの赤い瞳が燃えるように怒りを表現していた。怖くて怖くて体がブルブル震え、マーシャルさんの言葉を思い出す。『魔法都市ヴェラゼンで学園に通うほどの優秀な魔女』だと。そして今度は法廷で宣言したエフェルフィーレを思い出す。弱者は強者に逆らえない…。


 殺される…。まだ死にたくない…。同い年の子に殺されるなんて…嫌だよ…。


 ジワッと敷布団が濡れる。恐怖で失禁してしまった。


 タムリンは、ノアのポケットに手を突っ込み、ギルドカードを取り出す。そして、スキル一覧から【念話】を選択すると勝手に決定してしまった。


(謝りなさい。今すぐ、マーシャルさんに謝罪してきなさい!!!)


 頭に直接タムリンの声が響く。


「は、はい…」


 気の抜けた亡霊のように、ポタポタと垂れ流すことも気にせずに、一階のマーシャルさんのもとへ向かう。恐怖に怯えた顔と失禁したままのノアを見て「馬鹿だね。タムリン、直ぐにお風呂に入れてあげな。話はそれからだよ」と言った。


 なされるがままに服を脱がされ湯船で体を洗われる。


「タムリン…」


(マーシャルさんが許すまで黙っていなさい。あの人は…私の命の恩人…なの…あの人を悲しませることは絶対に許さない…)


 怒れるタムリンの赤い瞳は、涙が零れそうなほどに溜まっていた。それでも一度覚えたタムリンへの恐怖は拭えない。体は未だにブルブルと震えていた。


 お風呂から出たノアに、マーシャルさんが尋ねる。


「この店のこと…嫌になったかい?」

「いいえ。取り乱して…すいませんでした。あの…」

「いいさ。それより夕食にしないかい?」

「はい…」


 タムリンが運んできた料理。今なら理解る。この料理には、緑吊し上げ花(ハンギングフラワー)の肉が使われている。そして、マーシャルさんが食事前に真剣にお祈りをする訳も。


 心から緑吊し上げ花(ハンギングフラワー)に感謝する。そしてグッと泣くのを我慢しながら、緑吊し上げ花(ハンギングフラワー)のソテーを味わって…美味しく食べた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ