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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第三部 異世界から来た転生者
135/243

第135話

 プレゼントとは、全スキルの中で一つだけ、最高ランクにしてくれるというものだ。


「ねぇ。君を作ったのって誰?」

「賢者様だよ。あと知らない人間」


 ヒガシヤマさんか…。こっそりと子供を【看破】スキルで見てみる。過去の記憶があれば…。


 ◆◇◇◇◇


 それは…多分、数百年前のヒガシヤマさん。


『君には大切な役目を与えよう。僕は誰かを助けなければならない。だけど、人には逢いたくない。だから、もしも君の前に人間が来たのなら、プレゼントをあげて欲しい。それで、僕が人間を助けたことになるかも知れないから…』


 ◇◆◇◇◇


 まったく…ヒガシヤマさんは、本当にコミュ症なんだから…。コミュ症か…。懐かしい。ヒガシヤマさんの姿を見れて、声を聞けて…心がときめいた。


 そして、ノアは考える。どのスキルにしようかと…。


 新しいスキルを覚えて、最高ランクにするのもいいよね。でも、やっぱりアレかな。


「その前に、一つ聞かせて、生贄を食べないと消えちゃうのなら、ダンジョンはどうなるの?」

「良い質問。消えちゃうよ。でも、猫亜人村は、二つとも、この精霊王の結界内の森に転移させることになってるから、安心して」

「そう…。じゃ、ランクアップさせるのは、【支配】スキルでお願い」

「うん」


 子供はノアに触れて、ニコリと笑った。ノアの体に電撃が走り、ノアは気を失った。


 ◇◇◆◇◇


 目覚めると何やら騒がしい。ノアはベッドから起きると下着姿だったが、起きるのを待っていた冬狐姫(ヒエムスクィーン)のカルメンシータに、いつもの外套を着せてもらった。


「何事ですか?」

「猫亜人の村が、転移してきて…今は、お祭り騒ぎコン」


 ノアは家の外に出ると、二つの村の村長にお酒をすすめられた。


「いえ、お酒は…苦い経験があるので、遠慮します」


 広場を見れば、永遠の別れを決意して旅立ったアネッテが、仲間や家族に逢えた喜びからか、泣きながら笑って踊っていた。


 それを見て、ノアも笑えてますよ、ヒガシヤマさん…。

 あなたは…多くの人を救ったのです。




 勇者スキルを奪われ。左目、左胸、左腕を失い。寝れば殺されかけたときの悪夢にうなされ。体も心もボロボロだったノアを救ってくれたヒガシヤマさん。


 そんなノアを支えてくれたヒガシヤマさんは、いつしか頑張ってないのに、生きようとしていただけのノアを見て、日本という世界に帰って頑張ろうと決意する。でも。ヒガシヤマさんは、ノアの恋心と自分の恋心に気付いていなかった。


 日本に帰ると決めてしまったヒガシヤマさんに、ノアと一緒の生活は訪れなかった。


 後にノア・デモニウム・プリンセプスが語る三大苦難の二つ目は、ヒガシヤマさんとの別れであった。


第三部 完です!!


第四部からは、ノア自身が生きる目的を探して世界を旅します。

そこで世界の異変にちょっと気付いてしまったり…。


そんな感じです。

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