第135話
プレゼントとは、全スキルの中で一つだけ、最高ランクにしてくれるというものだ。
「ねぇ。君を作ったのって誰?」
「賢者様だよ。あと知らない人間」
ヒガシヤマさんか…。こっそりと子供を【看破】スキルで見てみる。過去の記憶があれば…。
◆◇◇◇◇
それは…多分、数百年前のヒガシヤマさん。
『君には大切な役目を与えよう。僕は誰かを助けなければならない。だけど、人には逢いたくない。だから、もしも君の前に人間が来たのなら、プレゼントをあげて欲しい。それで、僕が人間を助けたことになるかも知れないから…』
◇◆◇◇◇
まったく…ヒガシヤマさんは、本当にコミュ症なんだから…。コミュ症か…。懐かしい。ヒガシヤマさんの姿を見れて、声を聞けて…心がときめいた。
そして、ノアは考える。どのスキルにしようかと…。
新しいスキルを覚えて、最高ランクにするのもいいよね。でも、やっぱりアレかな。
「その前に、一つ聞かせて、生贄を食べないと消えちゃうのなら、ダンジョンはどうなるの?」
「良い質問。消えちゃうよ。でも、猫亜人村は、二つとも、この精霊王の結界内の森に転移させることになってるから、安心して」
「そう…。じゃ、ランクアップさせるのは、【支配】スキルでお願い」
「うん」
子供はノアに触れて、ニコリと笑った。ノアの体に電撃が走り、ノアは気を失った。
◇◇◆◇◇
目覚めると何やら騒がしい。ノアはベッドから起きると下着姿だったが、起きるのを待っていた冬狐姫のカルメンシータに、いつもの外套を着せてもらった。
「何事ですか?」
「猫亜人の村が、転移してきて…今は、お祭り騒ぎコン」
ノアは家の外に出ると、二つの村の村長にお酒をすすめられた。
「いえ、お酒は…苦い経験があるので、遠慮します」
広場を見れば、永遠の別れを決意して旅立ったアネッテが、仲間や家族に逢えた喜びからか、泣きながら笑って踊っていた。
それを見て、ノアも笑えてますよ、ヒガシヤマさん…。
あなたは…多くの人を救ったのです。
勇者スキルを奪われ。左目、左胸、左腕を失い。寝れば殺されかけたときの悪夢にうなされ。体も心もボロボロだったノアを救ってくれたヒガシヤマさん。
そんなノアを支えてくれたヒガシヤマさんは、いつしか頑張ってないのに、生きようとしていただけのノアを見て、日本という世界に帰って頑張ろうと決意する。でも。ヒガシヤマさんは、ノアの恋心と自分の恋心に気付いていなかった。
日本に帰ると決めてしまったヒガシヤマさんに、ノアと一緒の生活は訪れなかった。
後にノア・デモニウム・プリンセプスが語る三大苦難の二つ目は、ヒガシヤマさんとの別れであった。
第三部 完です!!
第四部からは、ノア自身が生きる目的を探して世界を旅します。
そこで世界の異変にちょっと気付いてしまったり…。
そんな感じです。




