第134話
ノアは転移ポータルを使い地上の家に戻った。勿論、10mを超える鉄巨兵となったラヴレーンチェフは封印したけど。
「ここがノアの家!?」猫亜人のアネッテが大はしゃぎする。
「うん…。久しぶり…」
と、ノアがソファーを撫でながら、ヒガシヤマさんを思い出し、感慨深い気持ちになってとき…。
「もぅー!! 何で帰っちゃうかな? あと少しでゴールでしょ?」
振り返ると5、6歳の子供が立っていた。
「だ、だれ?」
子供は腕を組むと、「俺は、第100階層のボスだ。名前はない」とふんぞり返る。
灰狼侍のアウギュスタは、即座に刀を二本召喚して臨戦態勢に入る。
「待て。俺は戦闘できない。話を聞け。それと…数百年ぶりに声を出す。喉を潤すお茶が欲しい」
【特定】スキルで調べるが、確かに戦闘力もない。悪意もない。
「う〜ん。これから夕食なんだけど、一緒に食べる?」
「おぉっ!! いいな。喰ったのは一年前の生贄以来だな」
飛び出したアネッテが爪を伸ばし、子供の喉元に突きつける。
「待て。殺すのは、また後にしてくれ。オマエは主の努力を無駄にするつもりか?」
「アネッテ。止めなさい。まずは話すことが大事です」
ノアは、久しぶりに精霊王の力を使って、ハンバーグステーキセットを作り出す。沢山食べそうなアウギュスタには山盛りだ。
白浮霊のフェールケティルと鉄巨兵のラヴレーンチェフは食べ物を食べられないので、フェールケティルは森を散歩して、ラヴレーンチェフは家の前の広場で寝転がっていた。
「おい、何じゃこりゃ、美味いぞ! 美味すぎる!!」
「アネッテ…こんなの初めて。美味しい…」
どうやら高評価らしい。流石は、ヒガシヤマさんの世界の料理だ。
「で? 君は、何で、100階層から来ちゃったの?」
「うん? だって…もうすぐ消えちゃうから。ほら、そこの生贄アネッテを喰えないから…」
「君。アネッテを挑発しないで」
「ご、ごめん…怒らないで…」
「これで怒らない猫亜人がいたらみてみていですよ!」
アネッテって、弱い人に強いタイプだね…。
「消えちゃう前に何か用があるの?」
「うん。俺を作った人間が、最下層まで来たら、プレゼントをあげろって」
「でも、最下層まで行ってないよ?」
「鉄巨兵倒したら、俺まで…階段おりて、すぐだったのに…帰っちゃうんだもん」




