第131話
「本当に女の子になっちゃった…」
焼死体や爆発でバラバラになった遺体のすぐ側で、自身の股間を確認しながら、異次元のセリフを吐くアネッテ。
ノアは微笑みを浮かべながら、【支配】スキルを発動して、アネッテを使い魔にした。
「アネッテは、白浮霊のフェールケティルと同じく、最後尾を守ってね」
「うん!! がんばるね!!」
やっとアネッテの声と言葉が性別と一致した。完全女の子版アネッテは、より可愛くなった。抱きしめてみると、全体的な柔らかさもアップしていた。
「拙者は…そのような使い方には…賛同しかねるでござる…」と、アウギュスタは言いながらも目がハート状態だ。これは一目惚れというやつなのかな? でも…そこまで男の子版と容姿の違いは無いのだけれど…。はて?
第90階層のボスまでは、進化した使い魔達を足止めできる強力な魔物は出現しなかった。
「予定通りだね。この扉の先にボスがいる。だけど、入室したらドアが自動で閉まる仕掛けが施されている。今までと違って逃げられないんだけど…どうしょう? 扉の開閉で認識されちゃうから【隠密】スキルも意味がないと思う」
冬狐姫のカルメンシータは不敵に笑う。
「ダンジョン踏破もいよいよ山場。ここのボスは、【特定】スキルが無ければ、戦いが始まる前も情報の入手は不可能だコン。そして、戦いが始まったらならば、逃げることはできなコン。その場で攻略法を見つけられなければ、敗北…つまり死を意味するでコン。しかし、ノア様も十分に戦闘経験を積み、スキルを使い熟し、立派な冒険者と成りまコン。臆する必用はありまコン!!」
ノアの震える手をギュッと握りしめるカルメンシータ。その上にアウギュスタ、ラヴレーンチェフの手が重なる。
「拙者たちを信じるでござる」
「オデ、ノア、マモル」
その様子を見ていたアネッテは、「仲間っていいね」と、白浮霊のフェールケティルに小さく呟く。
巨大な扉を岩巨兵のラヴレーンチェフが押し開けた。
巨大な空間の中央には、30m以上の巨大なボス…鉄巨兵が、どこからでもかかってこいと言わんばかりに、ノアたちを見下ろしていた。
小型版の岩巨兵のラヴレーンチェフでも…7m程なのに…。
鉄巨兵が、動かないことを良いことに、弱点を…いや、調べるまでもない。不自然に全身からはみ出ている真っ青な巨大オーブ。
「壊せるものなら…壊してみろと? 問題は、鉄巨兵の攻撃速度ですね。ラヴレーンチェフでも、鉄巨兵の一撃をまともに受けたら危険です。なるべくなら回避したいところですが」
「私に任せてよ!」と、アネッテが一歩前に出る。
そして、時間切れだと…鉄巨兵は、動き出した。その直後、想定外の射程距離と速度で、鉄巨兵のパンチが、集団で固まっていたノアたちに振り下ろされた!?




