第125話
「ど、どーゆーことですかっ!!」
村長に詰め寄るノア。自分の失態でもあるし、失態の理由が理由だけに…それを知られていて恥ずかしいし、怒るに怒れないノアだった。
「い、いや…人間様が来た時は、昔からの習わしで…わ、儂も…数百年前の文献を読み解き、人間様に失礼のないように…努力したんじゃ。決して!! 悪気があったわけじゃないのじゃ!!」
確かに【特定】スキルでは、村人全員が善人そのものだ。
「そ、それでは…人間様ってのは、猫亜人を作った賢者様なのですね。そして、女性で…時たまぶらりと遊びに来ては…昨日のようなことを?」
「は、はい…。賢者様だから…歓迎するのか、人間様なら誰でも歓迎するのか、正直…村でも混乱しました。しかし…仲間を死の淵から救ってくれたのは…賢者様と同じではと…」
「ノアだって、喜んでたでしょ?」
ノアの精霊義手パンチが、アネッテの腹にクリティカルヒットした。
「ノア…!?」
「わ、わかりました。ノアにも…いろいろ反省点はあります。でも…いえ、あのような豪華な宴をノアのために開いて頂き…本当にありがとうございました」
ペコリとノアは頭を下げた。はぁ…恥ずかしくて、この村にいられないじゃない!
「でも。ノアとの子って、人間なのかな? 精霊なのかな? 猫亜人なのかな? 楽しみぃ〜」
アネッテがとんでもないことを言い出した。
「はっ? ひ、避妊してないの!?」
「ひにん? それ…何? ひにんって、どんな人種なんだ?」
ヒ、ヒガシヤマさん…。ごめんさない…。そして、助けて…。
ノアは静かに座り直し…村長とアネッテに涙混じりで怒涛の説教を再開した。
「そうですか…。人間の文化は賢者様から伺っていた…残された文献のみでして…。それに…もし、身籠っているならば…この村で産んで頂けないじゃろか? 実は…」
オルミ村とアネッテの置かれている状況が説明された。
一年に一度、生贄を神に捧げる。今年の生贄がアネッテなのだ。
オルミ村と同じ猫亜人の村がもう一つあり、そことの代表者同士が戦い、負けた方が生贄を差し出す掟となっていた。
つまり大怪我をしたアネッテの兄が代表者だった?
「だから…ノアに出逢った時、殺されたくなかったんだ。童貞のまま…生贄にならなくてよかった。もしかしたら…子も残せるかも…ノアには悪かったが、もう思い残すこともない…」
「な、何ですか!! 生贄って!! 絶対に許さない!! それに…人間様って、猫亜人にとって神様と同じなんでしょ? 何故、アネッテは…最初にノアを見て、怖がったの!?」
アネッテの代わりに村長が答える。
「生贄の神も…人間なんじゃよ…」
恐らく、その神とやらは、階層のボスだとノアは確信する。
「なら、ノアは…その神を倒さなければなりません!!」
この何とも言えないイライラを…ボスにぶち込んでやります!!