第122話
「た、助けて…欲しい……人間は信用できないけど…強いの知っている…」
「あのね? ノアは人間じゃなくて、精霊なんだけど?」
「う、嘘よ…」
ペタペタとノアの体中を触ってきた。そして左腕に触れるとパァッと明るい顔になる。
「腕だけは精霊…。でも、他は人間…。やっぱり…嘘つき…」
ノアは面倒くさくなり腕を払って立ち去ることにした。
「うわっ! ご、ごめんなさい!! 薬草をっ!! 薬草を洞窟に採種しに行きたいの!! で、でも…やっぱり、一人じゃ…無理だった。このままだと、お兄ちゃんが死んじゃうの!! お願い、助けて!!」
「はぁ…。あのさ。ノアは、どうやってアネッテの傷を治した? ノアは薬草が無くても、魔物に関する大抵の治療なら出来るんだけど? あとは、アネッテが、ノアを信じて村まで連れていくかどうかよ?」
「わかりました…。だけど、だけど…約束してください。村を蹂躙しないで…。どうか、アネッテだけで…」
「だから、殺さないって!!」
アネッテを護衛しながら村に向かった。護衛というのも初めての経験だ。いつも誰かに守られてばかりだったからね。【特定】スキルにより、進路上に敵がいるのが把握できた。あとは…護衛を実体験するチャンスなんだけど、迂回する時間を戦闘で短縮するか、万一を考えて戦闘を回避するか、う〜ん…。そうだ!!
「ねぇ。アネッテ。このまま進むとね。魔物と鉢合わせになるの。戦うか迂回するかどっちが良いと思う?」
アネッテへ責任を押し付ける。ノアも悪よのぉ…。
「人間の…強さは知っている。このまま進もうよ。お兄ちゃんを早く助けたいの」
ヨッシャー!! 言質を取りましたぁ!!
「みんなは、いつもの布陣で!! アネッテは、ノアの背中から出ないで!」
「いや、アネッテも戦うし? アネッテだって…そこの灰刃狼と同じぐらい強いよ?」
は、はい? それじゃ…護衛じゃなくて共闘じゃん!!
「わ、わかった…。白浮霊のフェールケティルと隕石鷹のエドヴァルドは、上空からアネッテの援護をよろしくね」
敵は、いつもの青子鬼、赤巨鬼、緑豚兵の混合パーティだ。使い魔たちに任せていても問題ない。
ノアは、猫亜人アネッテの動きに注視する。確かに口だけじゃなくて強い。スピードを活かした攻撃を得意とする灰刃狼のアウギュスタが、猫亜人アネッテの前では、柔ではなく剛となる。猫亜人アネッテは、体の柔らかさと反射神経を活かした戦い方は、天下一品だった。
戦闘が終了すると、ドヤ顔で戻ってきたアネッテ。
「どうだ? 人間。アネッテも、そこそこ…ご、ごめんなさい…調子に乗ってしましましたぁ…。殺さないで…お願いします…」
一転して涙目になる。もう、いいよ。慣れたよ、そのキャラクター。
「それよりも、もうすぐ村だね。村に到着したら、ちゃんと紹介してよ? 殺人鬼に脅されて連れて来たとか絶対に言わないでよね!!」【特定】スキルには猫亜人だらけの反応があった。




