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ノア・デモニウム・プリンセプス  作者: きっと小春
第一部 使い魔店の看板娘
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第12話

 営業前、厩舎の魔物に餌を与えていると、白角兎(ホーンラビット)の様子がおかしいことに気が付く。餌に全く手を付けていないのだ。これはマーシャルさんに報告しないと。


 弱々しく丸くなる白角兎(ホーンラビット)を見ていると、タムリンが厩舎に入ってきて、オイデオイデオイデと三回オイデした。三回は急いでいる合図だ。


 タムリンに連れられてお屋敷に行くと、衛兵さんが待ち構えていた。


 あれれ? 何か悪いことしたっけ!?


「馬鹿だね。何かやましい事でもあるのかい? 裁判官様がしばらく街を空けることになってね。赤毒蛇(ポイズンパイソン)の裁判の開廷が後1時間後に決まって、慌てて衛兵がノアを呼びに来たんだよ」

「ノアも裁かれるの?」

「もう本当に馬鹿だね。ノアはあの兄さんがやったことを証言するだけさ。ほら、行っておいで」

「あ、は、はい…」


 あまりに緊張したため、無意識に衛兵さんの手を握る。衛兵さんは困った顔をするが、マーシャルさんによろしくねと言われてしまい。手を繋いだまま裁判所まで行くことになる。守衛さんと手を繋いだまま大通りを歩くノアは注目の的だったが、ガチガチに緊張しているノアには周りを見る余裕は無かった。


 裁判所のとある一室に通されたノアは、カルピチュの実を絞ったジュースをゴクリと飲む。


「お、美味しい…」

「それは良かった。うん、落ち着いたところで、罪状の確認をお願いするよ」


 裁判官のお爺さんは、ガチガチのノアを安心させるように優しくゆっくりした声で、罪状を読み上げる。証人が子供の場合、傍聴人からのヤジなどで萎縮してしまうことを避けるため、予め罪状を別室で確認させるのだ。


「はい。間違いないです」

「証言台には一人で来てもらうが、それまでは冒険者エフェルフィーレと一緒だ。心配ない。それとだね。裁判中は、わたしの言葉だけに耳を傾けてくれ。他の誰に何を言われても聞く耳を持ってはいけないよ。酷いときには、殺してやるだの。連れ去ってやるだの。脅す連中もいる。怖いけど、必ずノアの安全を守ると誓う」

「は…はい!!」


 証人として法廷に入るや否や冒険者エフェルフィーレは宣言した。


「この小さな証人ノアに対する如何なる悪意も、このエフェルフィーレへの敵対宣言とみなし、閉廷後に問答無用で攻撃を開始する!!」


 帯剣を許されず、スキルも魔道具で封印されているのだが、法廷の外に出てしまえば関係ない。そして、商業都市サナーセルでも有名な冒険者エフェルフィーレの宣言は思いの外強力で、ざわめいていた法廷は静寂に包まれた。


 罪人グラハムは、犯罪奴隷としてアドレクレス領地内にある黒鉄鉱山にて無期限労働が確定した。


 裁判所の外に出ると、「ノア。今日はよく頑張ったな」とエフェルフィーレさんに褒めらる。


「いえ、怖くて心臓が飛び出しそうでした」

「ははっ。そうか、では、衛兵の方。すまないがノアを頼む。私はこのまま別の事件の証人として、ここに残らねばならぬのでな」

「エフェルフィーレ様の庇護下にあるノア様を無事、『ムーンレイク使い魔店』まで送り届けることをお約束します」

「庇護下?」

「まぁ。気にするな。元気でなノア」


 バイバイとエフェルフィーレさんに手を振って、魔物たちの待つお店へ急ぐ。

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